「生きることの意味を考えさせられる作品」トイレのピエタ スペランカーさんの映画レビュー(感想・評価)
生きることの意味を考えさせられる作品
最初はよくある難病物かな?と思って見始めたのですが、見終わってみるとちょっとそれらの作品とは一線を画すような、生きることについて前向きになれる、とても奥深い作品だったなと思いましたよ。
もしかしたら人間は、死と直面して初めて生きることの素晴らしさを実感できる生き物なのかもと、この作品を見てふとそんなことを思わされました。
正直生きていて辛い、つまらないと思う時も時々あったりはします、しかしそんな生き方は死と向き合っている方々にとても失礼な生き方ですよね、そう考えさせられただけでも見た意義はあった映画でした。
それにしても、主人公・園田の境遇が切なかったなぁ・・・。
夢破れ、おまけに病に冒され余命宣告までされてしまったら、自分ならどう言う心境に陥るのだろうかと、思わず考えさせられてしまいました。
しかし園田は淡々としていましたよね、死にたくないとは思いつつも、生きることへの強烈な渇望がなければ、案外そんなものなのかも?
その微妙な状況を演じた野田洋次郎の絶妙な雰囲気作りが素晴らしかったなぁ。
本職じゃないとは思えない、いや、むしろ本職じゃないからこそ成せた業だったのかな。
一方、その対極となる存在だったのは杉咲花が演じた女子高生の真衣でしたが、死にたいと思っても死ねない、彼女の中にあるみなぎる生命力がそれを許さない、そんな人物像が杉咲花の演技によって見る者に強烈に伝わってきましたね。
生意気で、好き勝手ヤンチャし放題だけど、自分にはない真っ直ぐな感情に触れてしまったら、それは園田が変わっていくのも至極納得。
真衣の家庭環境がまたとんでもなく悲惨なものでしたからね、全てが対照的だったけど共鳴しあったのはある種必然でもあったのかな。
特にプールのシーンがとても印象的でした、閉塞感に苛まされていた彼女の自由への渇望がそこにあるようで。
しかしラスト、何者にもなれなかった男が、何かを成し遂げた瞬間は本当に感動したし泣けました!
エンディングの歌も素晴らしかった、さすが本職では今とても注目の存在となっているだけはありましたね。
岩松了が演じたお父さんとの会話も何気に良かったなぁ。
それと同室のリリー・フランキーのスケベオヤジっぷりと哀愁ね、あの哀愁が作品の質を更に一つ押し上げたような気がしました。
ちなみに終盤ほんの少し登場した佐藤健が、あまりにチョイ役すぎて最初気付きませんでした・・・。