「舞台が見たくなりました」幕が上がる fanmさんの映画レビュー(感想・評価)
舞台が見たくなりました
最初の方は、ももクロの演技とナレーションの多さに多少の不安がありましたが、黒木華が登場した後あたりからストーリーに引き込まれ、ももクロというアイドルではなく物語の登場人物として見ていたため、一部レビューのももクロ関係の物すら気にならないぐらい見入っていて、後半自然に涙があふれて止まりませんでした。
黒木華の演技はさすがで、黒木華を鏡にしてももクロの演技力を引き上げたように思います。
ムロツヨシは多少やりすぎな部分もありますが味のある演技で、物語が堅すぎないようなアクセントを加えています。
志賀廣太郎は、こういう脇役がいるからこそピシッと締まると思える部分もあるし、以外な部分で笑わせてくれます。
ももクロ以外の演劇部員にもう少しエピソードが欲しい気もしますが、時間を考えると難しい所です。
その中でも伊藤沙莉はキャラクターが出てて良かったと思います。
ももクロのメンバーはこの映画の中で演技力を上げていき、結果として彼女たちの俳優としてのドキュメントにもなっているようです。
いつも元気なももクロとはまた違うため、ももクロの魅力を出しきれてないと感じる人もいるかもしれませんが、それを求めると、舞台演劇を広めたいという平田オリザの意思に反するようなアイドルPV映画にしかならなかったでしょう。
自分としては、この物語の中でももクロメンバーの人間としての魅力が十分引き出されていたと感じていますし、貴重な経験だったと思います。
最近の映画のポスターを見ると、男女ひと組のポスターが多い事で分かる通り、恋物語が多いと思いますが、そこを省く事で、純粋に演劇にハマっていく姿を見れるし、その部分に頼らずに構成出来る物語だと思います。
映画の中で演劇はダイジェストになっていますが、完全版の演劇を見てみたいと思いました。
エンドロールで撮影の雰囲気が伝わってきて、いい現場だった事が想像出来ますし、ここで「そういえばももクロはアイドルだ」という事と、彼女たちの魅力が凄いという事を思わせてくれました。
原作の平田オリザの舞台演劇を世の中に広めたいという思いと、平田オリザに心酔する本広監督のいい映画にしたいという思いと、登場人物にかっちりハマったももクロの相乗効果がこの映画を名作にしたと思います。
ただ、派手な映画や、演劇にあまり興味の無い人、ももクロにしか興味の無い人にはウケが良くないかもしれません。
あと、自分自身も地上波でCMを見た記憶が無いし、自分の周りの感じでも映画の知名度がイマイチで、惜しい気がします。
フジテレビが協賛しているので、そう遠くない時期にテレビ放送してくれるのではないかと期待しています。