「「櫻の園伝説」を更新する傑作」幕が上がる 島田庵さんの映画レビュー(感想・評価)
「櫻の園伝説」を更新する傑作
まず何よりも、喜安さんの脚本が完璧。
もともと原作も素晴らしいのだが、
原作と比べて当然時間の制約がある中で、原作の世界観を全く崩さずに、いやむしろ研ぎ澄ましてさえいる。
高校生だった時を思い出す、というよりも
今の今、生きるかなしみとそれを越える喜びにふるえ、
繰り返し何度も観たくなる。
そして、
主演・百田夏菜子の演技が神がかっている。
とくに、黒木華と絡むシーンは圧巻。
おそらく本人の性格とはだいぶ異なるはずの「高橋さおり」を演じているのだが、
あれ?もしかして本当は高橋さおりみたいな性格だったのかな?
と本気で思わせるほどリアルな演技。
いやもうそれは、演技とは思えないくらい。ドキュメンタリーじゃないかと思ってしまうくらいのレベル。
サービス精神旺盛な本広監督らしい小ネタがあちこちに散りばめられているのはいつものことで、
ももクロネタの他に、本広作品ネタも仕込まれている。
これはまあ、プラスアルファの楽しみ。
唯一残念なのは、
劇中劇をもう少し見せてくれたらうれしかったのだが、
それは舞台のお楽しみ、というところか。
1990年の「櫻の園」が名作の誉れ高いが、
(私も吉田秋生さんの原作の大ファン)
「幕が上がる」はその伝説を更新し、新たな伝説をつくることになる
と、言い切ってしまおう。
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