劇場公開日 2015年2月28日

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「純度の高い青春映画」幕が上がる uriさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0純度の高い青春映画

2015年2月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

幸せ

先日、機会があり先行上映されていた「幕が上がる」を観た。

原作が日常を切り出すのがうまい平田オリザさんで、監督が「踊る大捜査線シリーズ」コミカルで心を掴むのがうまい本広克行さん、そしてかぶいたアイドル、ももいろクローバーZ。この3者で青春映画をとったというから、どたばたコメディ系なアイドル映画になるのかなと想像していたが、いい意味でそれは裏切られた。

演技経験はほとんどないという彼女らが、アイドルという枠を一度取っ払ったところで、癖のない照れもない演技で、自然な表情で台詞を口にする。ああ、これは純度の高い青春映画なのだということを、物語が進むにつれて強く感じる。しかも小手先を駆使することのない直球を投げてくる。そのひたむきさが、現実離れしていない分、要所要所で見る人の心を刷毛でなぞり何かを思い出させる。

ただ、ももクロが演じると、悩みの部分も爽やかになってしまう。その分泥臭さを黒木華(はる)さんが請け負ってくれたおかげで、この映画はびしっと締まったいいものになっている。

アクセントをつける部分は脇役がすべて背負い、彼女らはただひたすら、あの「幕が上がる」瞬間に向けて一所懸命駆け抜けている。「一所懸命」は誰でもやっていることだが、若ければやり方に迷い、大人になれば見えないふりをして進めてしまう。この映画では、「一所懸命」のやりかたを思い出させてくれるような気がした。見終わった後、日常に戻った際に「よし、私もがんばろう」って素直に思える。そっと背中を押してくれる。

映像は、なんだか少しまぶしい感じの淡い色合いで、綺麗で、どこまでも優しい。そして、監督の視点は、どこまでも愛情深い。恋愛要素0の映画なのに、初恋映画を観ているようなちょっと切ない気持ちにもなる。

ちなみにエンドロールが流れて、あっ、この人達はアイドルだった!と我に返るぐらいなので、肩肘張らずに気楽に観に行ける。ももいろクローバーZのファン(モノノフ)でなくても、心が洗われるような爽やかな映画なので、是非多くの人に観に行ってほしい。

uri