「無限の銀河(=青春)への切符(=可能性)」幕が上がる 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
無限の銀河(=青春)への切符(=可能性)
演劇に情熱を燃やす女子高生たちの青春を描いた平田オリザの小説を、「踊る大捜査線」の本広克行監督が映画化。
主演は、ももいろクローバーZ。
…と、それだけで敬遠する人は多い筈。
ももクロかよ…。
ただのアイドル映画でしょ。
正直、自分もそう思っていた。
が、見て、そんな偏見は吹っ飛んだ。
メチャメチャ良かった!!
とにかく、キラッキラ、キラッキラ、光り輝いているのだ。
メンバー全員、クランクイン前に、劇作家でもある原作者の下で演技を猛特訓。
その甲斐あって、ただ映画出て生温い演技してるアイドルはそこに居ない。フレッシュな“女優”がそこに居た。
一人一人のナチュラルな演技には本当に驚かされる。こんな実力あったのか!
演劇に情熱をぶつける登場人物たちと、真剣に演技に向き合うももクロの姿がシンクロ。ドキュメントでもある。
勿論、彼女たちはアイドル。アイドル映画の側面もある。
女優としての魅力とアイドルとしての輝き、両方が見事にブレンドしている。
話はシンプル。
弱小演劇部が新任教師の指導の下、全国大会を目指す。
シンプルと言うより、王道中の王道だ。
一つの夢に向かって奮闘、友情、悩み、不安、成長…青春の全てが詰め込まれている。
見ていたら、大林宣彦監督作を彷彿させた。
本広監督は撮影前、大林監督の下を訪ねたという。納得。
「踊る大捜査線」のようなエンタメ性の高い演出も悪くないが、間違いなくキャリアベストの作品になっただろう。
さらに、脚本は「桐島、部活やめるってよ。」の喜安浩平ではないか!
自分はももクロファンじゃないので、一人一人の個々の個性や性格は分からないが、この配役はぴったりだと感じた。
部の看板女優、ムードメイカー、しっかり者の後輩、謎めいた転校生。
中でも、部長役の百田夏菜子が特筆。
図らずも部長に選ばれ、図らずも演出を任され、悩みいっぱいの中、皆を引っ張っていく。
メンバーのリーダーでもある彼女が劇中劇でも主役じゃなく、影から皆を支え信頼する役なのが良かった。
また、かつて“学生演劇の女王”だった新任美術教師役の黒木華が見事な存在感。
自身も学生演劇出身で、ひとり舞台「肖像画」を披露するシーンはその実力を遺憾なく発揮。
彼女もまだ若手女優ながら、ほぼ素人と言ってもいいももクロを懐深く受け止める大物感。
ちょっとウザくてピント外れな顧問・ムロツヨシがユーモア担当。
多くのゲスト出演者も楽しい。
あの人、やっぱり何喋ってるんだか分からんし(笑)
部の演目は「銀河鉄道の夜」。
モチーフにもなっている。
光の速さで広がる宇宙の果てにはどうやっても行けないが、銀河鉄道の切符はある。
これから彼女たちが歩む限り知れない夢にも、可能性の切符が握り締められている。
メインタイトルが出るタイミングが絶妙。
そう、今、彼女たちの幕が上がったのだ…!
本当に素晴らしい作品だった。
今年のベストの一つに挙げずにはいられない。
ももクロだから…という理由だけで敬遠しないで欲しい。
大満足!
必見!
青春映画の新たな傑作!
昨日はコメントありがとうございました。
私はここにレビューを投稿する数年前から近大さんのレビューは結構見させてもらってましたよ。
今後も度々覗きに行きますので、よろしくお願いします。
しかしこの映画は、本当にアイドル映画としても青春映画としても、十分傑作と言って過言ではない作品でしたね。
いくら評判が良くても、正直ここまでちゃんと映画として素晴らしい作品だったとは想像もしてませんでした。
百田夏菜子がオーディションから準主役で朝ドラ出演を果たすことになったのも、これを経てなら物凄く納得です。
この映画見ちゃうと、今後はももクロをこっそり応援したくなっちゃいますね。