「人生の終わりにあんな恋が待っているなら、老いるのも悪くない。」トレヴィの泉で二度目の恋を さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
人生の終わりにあんな恋が待っているなら、老いるのも悪くない。
本作に出て来た言葉ではありませんが、
私は今まで「嘘も方便」の本当の意味を知りませんでした。
方便とは仏教の言葉で「悟りに近付く方法」という意味なんですね。
二人のウイットに富んだ会話には思わず微笑んでしまうのですが、そこは若い人とは違う人生の重さが滲みます。
お互いの子供達のことや、年齢に応じた身体の変化も。そういう部分も、一歩、一歩、二人が近付くごとに分かっていきます。
だからこそエルサは残り少ない人生を、その想像力でつらいことも楽しく、面白くしているだけだと思いました。
それを嘘だ!なんていうのは、無粋というものです。いや、残酷というものです。
それにエルサの「嘘」がフレッドを変えていくんですから、それこそ「方便」なんですよね。
実はエルサには、夢があります。
映画「甘い生活」のアニタ・エクバーグのように、トレヴィの泉のシーンを再現すること。
いい歳して何言ってるの?とか、嘘ばっかつくな!とか、フレッドは言いません。
もしその話の中に、真実が三分の一しかなくても構わない。エルサの奇妙な夢も含めて、なんて可愛い人だと、愛おしそうに抱きしめるフレッドは、いつしかしょぼくれた爺さんから、ダンディな紳士に変わっていました。
あ、男性は何歳になっても、女性を抱きしめているといい男になるんですね!
そして私もエルサみたいな、可愛いおばあちゃんになりたい。
愛する人を、笑わせるおばあちゃんでいたい。そう素直に思いました。
本作は2005年のスペイン・アルゼンチン映画『Elsa y Fred』のリメイクのようですが、オリジナルは未見です。
原題は「Elsa & Fred 」
小粋な本作には似合わない無骨な邦題が、ちょっと残念ですね(二度目って何でしょう?)。
でも構うもんか!
シャーリー・マクレーン、映画デビュー60周年記念作品です。
幾つになっても最高のコメディエンヌであるシャーリー・マクレーンと、年齢を重ねるごとに個性が際立つクリストファー・プラマーの共演は必見!
人生の終わりにあんな恋が待っているなら、老いるのも悪くない。