「障がい者の苦悩と、健常者の苦悩。奇跡の出逢いが描く、一筋の希望。」レインツリーの国 映画コーディネーター・門倉カドさんの映画レビュー(感想・評価)
障がい者の苦悩と、健常者の苦悩。奇跡の出逢いが描く、一筋の希望。
【賛否両論チェック】
賛:障がいを抱え苦しむヒロインが、彼女と真摯に向き合い続ける主人公と出逢い、少しずつ変わっていく様子が感動的。主人公のひたむきな姿も印象に残る。また、障がい者に対する理不尽な言動の実態や、障がい者自身の心の壁など、改めて考えさせられる描写も多くある。
否:2人がブログで出逢ったりする辺り、現実味はあまりないかも。恋愛に興味がないと、どうしても退屈してしまいそう。
〝感音性難聴”という障がいに苦しみながらも、初めて心を開ける人と出逢い、ぶつかり合いながらも少しずつ前向きに変わっていく利香の姿が、健気で感動を誘います。そして、そんな彼女の辛さを知り、時に戸惑いながらも、自分の意志で彼女と向き合っていこうと努力し続ける伸行もまた、非常にカッコイイです。イメージとしては、半身不随と記憶障害を抱えた女性を描いた、「抱きしめたい 真実の物語」に近いものがありますね。
そしてもう1つ忘れてはいけないのが、障がいを持つ人と社会の向き合い方。本作でも、その障がいゆえに職場で陰口を叩かれたり、ひどい時には暴力を受けたり、担当の上司ですら内心面倒臭がっていたりといった描写が出てきて、胸が痛みます。一方で、障がいを持つ人自身も、健常者との関わりを自ら閉ざしてしまったり、他人の好意を〝同情”と卑屈に捉えてしまったり、自分をさらけ出すことが出来なかったりといった姿も描かれ、思わず考えさせられます。勿論フィクションなので、極端な例だとは思いますが、それでも私達自身が自らのこととして向き合う必要があることだと感じます。
それにしても、2人が実際に会うまでのメッセージのやり取りの中で、西内まりやさん演じる利香の、
「私、そんなにキレイじゃないですし・・・」
っていうセリフには、思わずツッコミたくなってしまいますね(笑)。
ラブシーンなんかもほぼありませんので、デートでは勿論、家族や友人等大切な人と一緒に、是非ご覧になってみて下さい。