「あの木々をくぐって」イントゥ・ザ・ウッズ ロロ・トマシさんの映画レビュー(感想・評価)
あの木々をくぐって
シンデレラ、赤ずきん、ジャックと豆の木、ラプンツェル。あのおとぎ話達は、実はひとつの物語だった!?全てはあの仄暗い森で繋がっていた!ある一人の魔女の謀略により、図らずもそれぞれの物語に導かれていくおとぎの国の主人公達。紆余曲折あり、各々が各々のハッピーエンドを円満に迎えた筈だった。が、ハッピーエンドにはまだまだその先があったのだ。本当の結末が。語られなかった物語を、この映画は紐解いて行く。
まあ、こんな感じですか。
これ、ミュージカル映画としては最高峰のクオリティなんじゃないですかね。もうね、兎に角、歌う歌う。登場人物達がなかなかの歌唱力で以って気持ち良く歌いあげております。延々と何かに付けちゃ歌っておりますからね。ミュージカルな映画が観たい!て方には最高の体験が約束されていると思いますよ。
で、問題はミュージカルを取っ払った、純粋に一個の物語としての観点で。
んー、んー。なんというか、あれでダメとは言いません。言いませんが。身も蓋もないことを言えば、これ、あの四つのおとぎ話じゃなくてもよくね?となって。選んだ意味がよく分からないんですよ。いや、そりゃもちろん整合性をきっちり取ってはいるし、個々の話が繋がってはほぐれ、そしてまた繋がっていく構成もなかなかだと思います。
ただね、せっかくですよ。せっかく、おとぎ話からあれこれ主人公達を集めてきたのに、みんな仲良く横並び、お手てつないで並列に扱ってるもんだから、無個性なんですよキャラクター達が。誰かが強烈な振る舞いをしたとしても、そこに彼女なり彼なりの納得させてくれる行動原理を感じない。後半になるにつれて、それが顕著になってきて。おとぎの主人公脇役様々なキャラクターが入り乱れて、別にこれじゃもう誰でも良いじゃねえかよ!な様相で。そこがなんというか、勿体無いと思ったんですよ。あの四つわざわざチョイスしたんなら、もっと煮詰めてこうよ、て。
まあ、うん。このカオスっぷりを楽しむってのもひとつの手なんでしょうけど。
いやあ、取り扱いの困るというか。不思議な映画でした。