「ハッピーエンドのその先は…」イントゥ・ザ・ウッズ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ハッピーエンドのその先は…
「シンデレラ」「赤ずきんちゃん」「ジャックと豆の木」「ラプンツェル」…。
おとぎ話の“その後”を描いた同名ブロードウェイ・ミュージカルをディズニーが映画化。
話の軸になるのは、とあるパン屋の夫婦。
魔女に呪いをかけられ、子供が授かれない。
呪いを解くには、三日目の満月の夜までに4つのあるものを探さなければならない。それが…
・ミルクのように白い牝牛
・血のように赤いずきん
・トウモロコシのように黄色い髪
・黄金に光り輝く舞踏会の靴
それぞれの願いの為に、森の中へ…。
前半はおとぎ話そのままに、おとぎ話の登場人物とパン屋夫婦がリンク。
ブラックな笑いやパロディ的展開、それぞれ意外な繋がりがあったりと楽しい。
中盤で一旦めでたしめでたし。
後半が“その後”。思わぬ事件が起きて大騒動に…!
おとぎ話をごちゃ混ぜにしてひっくり返したのはいいけど、一番の見所である“その後”が駆け足気味になっちゃったのはちょっと残念。
ある評で、よくディズニーがこれを映画化した、というのを目にしたが、本当にそう思う。
とにかく登場人物が皆、自分のエゴや欲ばかり。
パン屋夫婦は子供を授かりたい為に、赤ずきんちゃんからずきんを奪おうとするわ、ジャックの親友の牝牛を魔法の豆と交換するわ、ラプンツェルの髪を強行手段で手に入れるわ、シンデレラの靴を何とか貰おうとしたり。
魔女にもある目的が。実は計算高いシンデレラ、浮気性な王子…。
幸せが裏切られたり、事件の責任を擦り付け合ったり、さらにはディズニー・ファンタジーらしかぬ死者も。(まさかの人物が!)
よくよく考えてみると、おとぎ話って実は結構残酷だったり、教訓も多々。
過ちや後悔の中から、自力で運命を切り開こうと行動する様は、近年のディズニー実写ファンタジーに一貫しているテーマ。
滑稽なおとぎ話の登場人物の中で、現実的なパン屋夫婦。エミリー・ブラントが行動力があり魅力的な妻を、ジェームズ・コーデンが頼りなさげだけど優しい夫を、それぞれ好演。
公開近付く新星リリー・ジェームズのシンデレラが話題だが、アナ・ケンドリックのシンデレラも可愛い。
“荒地の魔女”のようなメリル・ストリープはさすがの貫禄。(でも、オスカーにノミネートされたのは“メリル・ストリープ”だからかなと…)
キャストが聴かせる歌声は、いずれも必聴の価値あり!
あ、それから、ジョニー・デップは…。ただのゲスト出演。
楽しく心暖まるファンタジーを期待している方にはオススメ出来ない。
ハッピーエンドのその先は…?
決して誰もがハッピーエンドじゃない。
苦境の中から各々が見つけ出す、切ないけれど新たな幸せ。
おとぎ話のリアル。