「癒しの海」モアナと伝説の海 玉川上水の亀さんの映画レビュー(感想・評価)
癒しの海
「リトル・マーメイド」「アラジン」のジョン・マスカーとロン・クレメンツの2人が監督を務めた最新作は、オセアニアを舞台にヒロイン・モアナが繰り広げる大冒険を通して、“失われたもの”を元に戻す物語が描かれる。
この物語は遥か昔、生命の源である全能の女神テ・フィティの“心”が奪われたことに端を発している。
全能の女神の大事な“心”が奪われたことにより、世界のバランスが崩れ、“闇の侵食”が始まる。
美しい海と豊かな自然に恵まれたモアナが生まれ育った南の島モトゥヌイにも、遂にその“闇の侵食”の影響が及んでいく。
島の族長の娘であるモアナは、世界の危機を救う者として“海”から選ばれ、
島を取り囲むサンゴ礁から外に出てはいけないという掟を破って大海原へ全てを元に戻す旅に出る。
モアナはある意味、オセアニアのジャンヌ・ダルクと言えると思うが、小娘一人が果たすには余りにも荷が重過ぎで、正に“ミッション:インポシッブル”なことに猪突猛進しているようにも見える。
その点では、理想に燃えて騎士道を突き進むドン・キホーテの女版とも言えるかもしれない。
モアナにもドン・キホーテ同様に従者がいて、海と風を司る半神半人のマウイが冒険の旅に同行するのだが、彼こそがテ・フィティから“心”を奪った張本人。
彼は“心”を奪ったことにより、“英雄”の称号とどの様な生物にも変身出来るアイテム、“神の釣り針”を失ってしまう。
だからマウイにとってモアナとの冒険は、失った“英雄”の称号と“神の釣り針”を取り戻す贖罪の旅でもある。
この旅には幾つもの障害や困難が待ち受けている。
見た目は可愛いが凶暴な海の海賊たちのカカモラや、キラキラと光る物大好きな巨大カニのタマトアが彼女らに襲い掛かって行く手を阻む。
そして“海”は実写と見紛う程に美しく、生き物のようにモアナに“語り掛け”たり、助けたりもするのだが、時に嵐や大波で試練を与える。
そしてモアナらの目的地には強大な力を持つ“ラスボス”、マグマの悪魔テ・カァがいる。
これらの強敵や困難に対し、モアナはどう立ち向かっていくのか。
本作と同様にヒロインが活躍するディズニー・アニメーション映画で大ヒットした「アナと雪の女王」があるが、姉のエルザが魔法の力で極寒の世界に変えてしまった王国を救う為にヒロインのアナがとった解決方法と、モアナが世界を元に戻す為にしたことは相通ずるものがあると思う。
それは力対力では何も解決しないということ。
この癒しとも言っていい結末は、描かれた海の美しさと共に我々の心に爽やかな温もりを届けてくれる。