「ディズニーすげえ」ズートピア ヨックモックさんの映画レビュー(感想・評価)
ディズニーすげえ
「ディズニーってやっぱすげえ…」というのがまず第一の感想。一昔前と違い、ディズニー・ピクサーのCGのクオリティは、その他一流スタジオを比した時にハイレベルな物はなくなっている。シナリオも大どんでん返しや斬新で奇をてらったものでもなく王道的展開。展開も読みやすい。にも関わらず他作品とは一線を画す完成度。ムダがなく、ゆえにストレスもなく、観ている間退屈することがまったくなかった。特定の個性が目立っているわけではなく、全ての要素が高次元でまとまっているので、面白さの説明がしにくい。まさに王者の作風。
まずシナリオ。
差別を扱った作品なのにまったく暗くない。そして、作中では直接的に「差別は悪である」と言及していない。むしろ差別や偏見とは普遍的に存在するものである、という演出がなさている。でも、差別がない世界はもっと合理的で愉しいものであるということが、うったえられているのだ。
そのため、重めのテーマを取り扱っているが説教臭かったり独善的な雰囲気もなく、また真の意味で差別や偏見という事象への真摯な考え方が読み取れる。ジュディが泣きながらニックに縋るシーンは象徴的で、ジュディが語った内容は「私が悪かった、許して欲しい」ではなく、どうしても偏見に寄ってしまう自分の心への嫌悪感と、それでもニックと協力してズートピアの社会を良くしたいという心情の吐露だった。これまで差別について描いた映画はいくつか観たけれど、本作が一番しっくりきた感じがする。
設定や美術。
息を呑むファンタジックなビジュアルは流石だが、それだけじゃないのが素晴らしい。荒唐無稽のようで、ところどころで説得力のある設定がなされている。それは大型動物から小動物まで乗れる電車であり、キリンに飲み物を届ける売店のダクトであり、街のネズミ用区画であったりする。シリアスで現実的な社会問題をテーマとする作品と、絶対にありえないムチャな世界設定をつなぎ合わせようとする技術に目を見張る。冒頭の「なんやかんやで進化して理性を持つようになった」という説明も意味がある。ヌーディストの集うヨガ教室の設定も印象的だ。
キャラクター。
どのキャラクターも非常に魅力的で可愛らしい。特にジュディは耳のタレ具合や鼻のひくひくした動きで感情がわかりやすく、ウサギというチョイスが本作の主人公にピッタリな役どころに感じた。冒頭からオブラートに包まず「なんで私たちが幸せかわかるか?夢を諦めたからだ」と語るジュディの両親のぶっ飛んだ教育方針も好き。
全体通して大人向けな印象を受けた。アクションシーンも決して多くないし、お子様は退屈なんじゃなかろうか。