「ディズニー映画の底力」ズートピア 森泉涼一さんの映画レビュー(感想・評価)
ディズニー映画の底力
ディズニー映画の躍進が止まらない。「インサイドヘッド」でも同様のことが言えたが、近年のディズニー映画は大人も子供も一緒に楽しめるというコンセプトに加えて人間の成長を促すような要素が一昔前に比べ格段に増している。
ズートピアとは動物の理想郷を指し、どんな動物でも仲良く暮らせる街を意味する。人間でいう黒人と白人であったりと差別が激化していた時代に一緒に共同することを目的としていたのと同じように、本作も野生動物と肉食動物が共存できる社会、夢の楽園ズートピアを憧れとしている少女の物語である。
野生と肉食がなぜ相反するのかという簡単な説明を冒頭でスマートにまとめてあるあたりはディズニーが子供に好かれる特徴的なポイント。そして、うさぎという可愛らしいキャラクターで惹き付けるのもそうだが何より弱小動物を主役に置くことで気持ちが入りやすい点でもディズニーの見事な戦略というべきか。
主人公のうさぎジュディは大人になり肉食動物が大半を占める警察官として小柄ながら入社するわけだが、ここでの努力する姿勢でも子供と大人の心を掴みにくる。物語はここから本題へと移行し草食が肉食を恐れているという隠れていた気持ちが露わになることでズートピアの平和が脅かされていく。双方の偏見が再燃していく中でジュディは相棒のニックと原因の究明にあたる。
ディズニー映画にしては少々シリアスな内容に様変わりしていくのには意表を突かれたが、二人の友情であったり特にニックのユニークな性格がこの雰囲気を緩和していく。いつの間にかディズニーワールドへ引き込まれていくのはいつものことながら不思議な感覚でもある。
本作は非常に完成度が高い。個人的にあまり注目していなかったが、その理由の一つとして動物推しを前面にしていることから展開がなんとなく見えると高を括っていたからである。影響力の面では大ヒットしたモンスター映画「アナと雪の女王」より一歩上と言っていい。