「歪な存在を生かすのは誰か」ナイトクローラー 神社エールさんの映画レビュー(感想・評価)
歪な存在を生かすのは誰か
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予め物語の概要は知った上で観賞したものの、ジェイク・ギレンホールの常に瞳孔が開いている様な顔がとても印象的で、とても不気味だった。
見ている最中はルイスの、人を人とも思わないサイコパスの様な振る舞いに恐怖心を抱いたものの、一度立ち返ってみれば、ルイスはただひたすらにこの職業で成り上がる為のストイックな努力をしているだけに見えてきて、実際ルイスは悪では無い気がするほど。
むしろ悪はルイスがのしあがれる社会、悲惨な映像ばかりを取り上げ、自分がのしあがるのに都合が良い報道を扇動するスタッフ、いや、それを(いくら見たくないと言う人がいたとは言え)見たいと潜在的に思い視聴してしまう視聴者=我々こそが悪をのさばらさせている原因なのでは、と思ってしまう。
思えばTV局の女性スタッフだって、本当にジャーナリストとしての誇りがあればルイスに屈することも無かったし、相棒も強盗犯の運転手を尾行する前の時点で金に釣られず警察に通報すれば生きられた訳で、感想を見れば「胸糞悪くなった」って感想の中に「アクションシーンが凄かった」って言うものがチラホラ見られるのもそういう事が望まれている社会を皮肉として描けた証拠なんじゃないかと思う。
作中では報道番組だったけれど、エンタメも大なり小なり同じ問題(アクション映画にはVFXや過激なスタントが無いと評価されにくかったり、アニメや漫画もエログロが過激になっていかないと人気が出ない風潮)を抱えている様に感じるし、そこに危機意識を持ったからこそアカデミー賞でノミネートされたのではないか。
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