「長回し大好き。」バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) mg599さんの映画レビュー(感想・評価)
長回し大好き。
これは人を選んでしまう映画である。
おもしろいと思える人とつまらないと思える人を完全に分けてしまいそうだ。
アメリカのショウビズに通じている人は、主人公の焦燥ともども理解できるのではないだろうか。
主人公リーガン・トムソン(マイケル・キートン)はアメコミヒーローもの「バードマン」で一世を風靡した俳優。その4作目を断ってからキャリアがダウン傾向。そこで、レイモンド・カーヴァー原作の芝居を書いて演出までして、ブロードウェイ公演にこぎつけた。役者としての自分を見せつけるために。
マイケル・キートンは「バットマン」の俳優。このキャスティングだけで、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトウの企みは透けて見えるようだ。
このリーガンの焦りを、誰が名付けたか超絶長回しで描く。
映画のテーマに沿った演出ではあると思うが、まずはこの技法に度肝を抜かれる。途中にリーガンのイメージシーンもあり、空を飛んだりもする。
天才エマニュエル・ルベツキの撮影も大貢献している。
マイケル・キートンも、実際に、リーガンのような焦りや悩みをもっていたのではないかと思うと、マイケル・キートンの一世一代の芝居には本当に胸をつかれる。
表面的なところでも、この映画はおもしろいが、もっと深いところで人間を描いている。そこまでの洞察力が僕に備わっているのかどうか。
人は選ぶが、ものすごい映画である。
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