劇場公開日 2015年6月20日

「天才は求め続ける」ターナー、光に愛を求めて 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0天才は求め続ける

2020年1月15日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

知的

難しい

芸術家の苦悩を描いた作品ほど苦手なジャンルはない。
何故なら、私のような凡人には分からないから。

18世紀末のイギリス。後のモネなど印象派の画家たちに影響を与えたジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの伝記。
…と言っても、いつもながら無知で疎く、名前を聞くのも初めて。
2時間半もあり、こりゃもう見る前からギブアップの声を上げていたのだが…、

芸術家としての感性や深いテーマ性などはさすがによく分からない。
が、一本の伝記映画としては、マイク・リーの格調高い演出、ティモシー・スポールの名演により、思いの外見れた。
特に、スポールの名演が素晴らしい! 若い頃から死まで、全編ほぼ出ずっぱりで、堂々たる名演、熱演、存在感。単なるハリポタの“ネズミ男”ではない名優だ。
そして、映像の美しさ! あたかもターナーが手掛けた絵画のよう。これだけでも見る価値はあった。

どの時代、どの人物もそうだが、天才というのは理解されない。
芸術家としては紛れもない天才。
が、芸術アカデミーからは異端の目で見られる存在。
人間的にも欠陥点あり。
理解者で、仕事の助手として支えの存在だった父の死。
身体を重ねたり、交流を持ったり、最期の時まで世話してくれたり、数多の女性の存在。
インスピレーションを求め、各地を旅する。
苦悩・葛藤、繊細であり複雑な内面、放蕩の果てに、何を求めたのか…?

いや、求め続けたのだ。
芸術家としての光を、人間としての愛を。
天才芸術家に“完成”は無い。
だからこそ後世の芸術家たちも、我々凡人も、天才の求め続ける姿に感服される。

近大