「友との別れが無ければ、そこそこの作品。」ワイルド・スピード SKY MISSION カガチさんの映画レビュー(感想・評価)
友との別れが無ければ、そこそこの作品。
前作から引き続き、「ポール・ウォーカー」と「ヴィン・ディーゼル」が主演を務める、アメリカきってのドル箱映画「ワイルドスピード」。
しかしその撮影中、3以外の全てに出演していた「ブライアン・オコナー」役のポールが事故死。
本作は彼の遺作となってしまった。
酷い言い方になるが、正直彼の死がなければ、この作品はそこそこの映画になっていた。
当然映画としての魅力はいくつもある。本当に飛行機から落として撮影した車両による「スカイダイビング」や、レプリカではあるものの「ライカン ハイパースポーツ」が登場。
パーキングでのデッカードvsドムや、GTR R-35のカーチェイス、ホブスのターミネーター的復活など、見所が溢れている。
しかし言い換えると、「どれもよくあるアクション映画の二番煎じ」とも言える。
そう、新鮮味がほとんどない。唯一カーアクションとしては、車でのスカイダイビングが見どころだが、それ以外はどこかで見たことがあるアクション映画の演出とも言える。
足を踏み外さない様な安パイの映画進行であるため、そりゃ万人受けするのも事実だし、間違ってもこのアクションの数々が並んだ映画が失敗することなんて万に一つ無いだろうが、新鮮味と言う点では落第点だろう。
数々のアクション映画を見て来た人間にとっては、一つ一つのシーンに既視感を感じ、あくまでも「ワイスピだから」「ブライアン(ポール)の最期だから」見ているにすぎず、言い換えれば「ワイスピでなければ」「ポールの最期でなければ」そこそこの映画と言えよう。
あえて一つだけ不満な点を挙げるなら、終盤の「ドムの復活」だろう。
敵との最期の一騎打ちで、ドムが乗ったチャージャーがヘリに直撃するかと思いきや、少しだけかすめて落下。
チャージャーは落下。大破して敵は胸をなでおろすが…と言うシーンで、大破したチャージャーから救出されたドムは心肺停止。
ブライアンによる蘇生も虚しく、あきらめムードが漂ったさ中の復活を遂げたドムが、皆から祝福されて大団円……と言う幕引き。
いや、これは流石に臭すぎるでしょうよ。
いかにこのシリーズが「ヴィン・ディーゼルのイメージビデオ」に成り下がっているかが一目で確認できる、安っぽい演出。
結局死んでなかった設定の常習的な映画シリーズでこんな事を言うのは間違っているだろうが、どんなシリーズでも"死んだと思った仲間が復活した"が許されるのは1回だけ。
このシリーズでは既に「レティの復活」でそれを使い果たしてしまっているので、観客としては「またか」「どうせ死なないし」「もういいって」と、見ているのもつらくなるくらい恥ずかしい演出だ。
でもまぁそこを除けば、"カー"アクション映画としてはとても面白かったし、手に汗握る物があった。
終幕の演出には涙が止まらなくなったし、「See You Again」は何度も聴いた。
少し含みを持たせると、安定した内容で約束された成功を勝ち取った、平凡な映画。
しかしそこに「ある事情」が重なって、良い映画になった。そんな感じ。