「アジアの素朴な学校もの 分校と、新任教師と、日記帳。これぞ三種の神器です。」すれ違いのダイアリーズ きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
アジアの素朴な学校もの 分校と、新任教師と、日記帳。これぞ三種の神器です。
山編が「ブータン、山の教室」ならば、本作品は水郷編。
秀作。素晴らしい。
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僕が高校時代に始めた「LOVEデスク会」については別のレビューで触れたことがある。
退屈な物理の時間に、物理教室の大きなグレーの机に鉛筆で書き込み。シコシコ。
次の時間、よそのクラスの誰かがそれに返事を書いてくれる・・♪
見ず知らずの誰かが、先生への悪口やら人生の悩みやら、美味しいかき氷屋さんの情報を残し、それへのレスポンスが幾人もの筆跡で日々増えていくのだ。
思えばあれは“チャットの原型”だったのだなぁ。
タイ映画の本作は
製作年が2014年だから、スマホやLINEなど存在しなかった頃の、懐かしき良き時代の話だ。
新任教師たちが、その夢と、気負いと不安を綴った日記帳。
この小さな古びた日記帳という“秘密のツール”が、特別の場所から発見されて、時を隔てて知らない誰かと突然、筆跡と心が繋がるのって、それこそワクワクの極みだと思う。
「アラバマ物語」の木の洞にも
「ラストエンペラー」の玉座の下にも特別の秘密があった。
ちょっとホラーなツールの例では楳図かずおの劇画「漂流教室」でミイラの体内を使って、荒廃した未来と現代との間で文通が成立する。
水郷の分校。
トイレでの闘い。
子供たちと教師の素朴な共同生活。
そしてエンディングで、前任者のエーンと新任のソーンとの初対面。こんなにこちらまで嬉しい気持ちにさせてもらって、僕はあのシーンを見る。
あんなに祝福したい気持ちで若者たちの出会いのシーンに立ち会えたのは、他にあまり覚えがないな。
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