フレンチアルプスで起きたことのレビュー・感想・評価
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「男はいざとなったら女を守る」なんて嘘っぱち
いまだに阪神大震災のとき、母が咄嗟に横で寝てた自分にかぶさって守ってくれたことを思い出す。親が咄嗟に子供を守ってくれたことはいつまでも覚えているものだ。
その逆もしかり。
人間だれしも非常時に思いがけず利己的な行動をとってしまうことはあるだろうが、トマスもなかったことにしたりしないでさっさと謝ればよかったのだ。ぐだぐだ「君の見方は異なる」なんて言い訳するから妻が証拠の動画まで持ち出す羽目になる。
この映画を見てトマスが可哀そうとかそこまで責めることないとかトマスを擁護するようなら、いざってときにトマスのように自分だけ逃げるか自分の失敗を認めない男だと思う。
両親がそんな感じなので子供たち…もともと家族サービスしてあげてる父親「に」つきあってあげてる感満載だった2人も無言になり親とろくに口を利かなくなる。そりゃそうだ。祝って時に助けてくれない親を見て失望しないわけがない。
終いにはトマスは妻と子の前で「こんな自分は嫌だ、ぴえん(´;ω;`)」と大声でみっともなく泣く。男は泣くなとは言わないがその理由で泣くのはどうよ。そして子供たちに慰められる始末。子は鎹というか潤滑剤というか親のメンタルヤングケアラーまっしぐらだ。
結局、翌日トマスが妻を救出して(おそらくは妻の一芝居)何となく問題は棚上げされる。それにしても子供二人を置き去りはどうなのか。夫婦二人はなんとなく仲直りしたっぽいが子供たちが抱える親に対する不信感はそのままどころかむしろ増してるんじゃないか。
…と見てて嫌~~~な感じになる映画だが、その嫌~~~な感じがなんともリアリティあふれていてこの監督はやはり天才だと思うのだ。
「男はいざとなったら女を守る、だから黙ってついてこい」のように偉ぶってる男にまず見せて反応を見せたい映画No.1である。場合によってはマッツたちのように議論になって喧嘩になりかけるかもしれないが、お互いの本音がよくわかるという意味では、結婚前の相手を見極める試金石に良いかもしれない。結果として別れることになっても別れるべき相手がわかるならそれでよいだろう。
自業自得。ラストシーンには驚いたが。
滅多にないことだが、この映画に関しては邦題の方が原題よりも良いと思う。全て自業自得(というか本性を隠し続けてきた❓)だとは思うが、このラストシーンには驚いてしまった。思うにこのバスでのラストシーンのインプリケーションは、彼女はキレやすい、いずれにせよ、離婚は時間の問題、ということではないかと思う。子役の2人の演技が自然で良かった。
【妻子持ちの男にとっては、ヒジョーに辛い気持ちになる映画。リューベン・オストルンドの映画は、鑑賞後は心穏やかではいられないのである・・。】
ー リューベン・オストルンドの映画は、人間の深層心理にある”罪悪感”を呼び起こす・・。ー
◆感想
・フレンチアルプスにスキーリゾートに来た、トマス&エバ夫妻と幼きベラ&ハリーに起きた”ある出来事が切っ掛けで、夫婦関係、親子関係に不穏な空気が立ち込める、心理劇である。
・冒頭から、表層雪崩を人工的に起こす爆発音が、何度も起こる。
◇作中、頻繁に流れる”ヴィバルディの四季”の激しく弦楽器が掻き鳴らされる”夏”が、この不穏な空気感を煽り立てる・・。
・自らが、咄嗟に取ってしまった行動により、ドンドン心理的に追い詰められていく、トマス。
ー 翌日の子供達のよそよそしい、態度・・。ー
・エバは、夫の行動が許せずに、何度も詰問する。認めない、トマスに対しトマスの友人、マッツとその恋人に、”その動画”を見せる・・。
”トマスを呼んだ‥。でも、彼はいなかった・・。”
ー もう、止めてあげて・・。ー
・そして、トマスの友人、マッツとその恋人にもその影響は波及するのである。
・マッツはトマスと、新雪のパウダースノーを楽しませるためにスキーに連れ出すが、トマスの家族は来ない・・。大声で、ストレス発散を試みるが・・。
・到頭、トマスは
”こんな性格は、捨てたい!”と妻の前で号泣する。それを聴きながら涙する子供達。そして、パパの元に・・。
・最終日、トマスはホワイトアウトに近いゲレンデに家族を連れて行き、先頭に立つ。エバが迷子になり掛けるが、トマスが助けに行く。そして、トマスがエバを助け・・。
ー ヤレヤレ、これで一家は大丈夫・・、と思いきや・・。下りの山道で、今度は、奥さんが・・。
本当に、リューベン・オストルンドは、意地悪だ・・。ー
<身近に起こりうる些細な出来事を、人間の深層心理に基づいた行動学、もしくは社会心理学的な視点で、ブラックユーモアたっぷりに見せるリューベン・オストルンド監督が、一気に名を上げた作品。
苦笑いを浮かべざるを得ない、嫌ーな気分にさせる、オストルンド節全開作でもある。
次作は、もっと嫌ーな気分になります・・。>
タイトルなし
雪崩に家族を見捨て逃げ出す夫に失望し、人の前でいびり倒す妻の気持ちは良くわかるし、描写がうまく描かれてる。吹雪で助け出しハッピーエンドかと思いきや、バスの運転が下手だと妻が乗客をすべて下ろすがそこは賢明かと思い、何を伝えたいかわからなかった
フレンチアルプスで起きたよく分からないこと
『ザ・スクエア 思いやりの聖域』で2017年のカンヌ国際映画祭パルムドールに輝いたスウェーデンのリューベン・オストルンド監督の2014年の作品。
かの作品は分かる人には分かる、分からない人には分からない何ともシュールな作品であったが、こちらは割りとすんなり話に入っていけた。
…が、それも前半くらいまで。
フランスのスキーリゾートでバカンスを楽しむあるスウェーデン家族。
夫はエリートで、奥さんは美人で、幼い姉弟も可愛くて、画に描いたようなアットホームな理想の家族。
屋外レストランでランチを取っていると、人為的に起こした雪崩が。
夫は「大丈夫大丈夫、平気平気」と呑気にしていたが、予想を超えてみるみる迫ってくる。
一転してパニックに。すると夫は妻と子供たちを守らずに、我先にと逃げてしまう。
大惨事や被害者も出なかったのだが…、
その後、明らかに家族の態度が一変。
冷たく、よそよそしく。
ホテルへ帰るシーンが印象的。無言で、この家族はこれから何処へ向かうのか…?
妻は何ともないと装うが、アメリカ人夫婦との会食の席で。
口論になる。私たちを置いて先に逃げ出した、いやそんな事してない…の水掛け論。
部屋に戻ると、子供たちもぐずり出す。
理想的で素敵で頼りがいのあった夫/父親像はいとも簡単に崩壊。
序盤の幸せ家族姿は何処へ…? 最悪のバカンスに…!
人の本性が明かされる事態に見舞われた、ある家族の危機。
その模様をブラックに。
未曾有の事態に襲われて平静を保てる人は少ない。パニックになって当然。
だから、この夫の行動も一人の人間としてはあり得ない事ではない。
でも、一家の大黒柱としては…。
守るべき存在があるのならば、自然とそう身体が動くのではないのか…?
それともやはり、我が身が恋しいのか…?
何ともモヤモヤ…。
妻の言及。ヒステリック。
自責の念に押し潰され、子供のように号泣する夫。
そこまでは良かったのだが…、
アメリカ人夫婦のエピソード。
夫の友人のエピソード。
それらが交錯し、いまいちよく分からんシーンや描写も増えていき、良くも悪くも後の『ザ・スクエア』のようなシュールな作風に。
終盤の展開も、夫が雪霧の中で迷子になった娘を助け、家族の絆再び…という事でいいのかな??
その後のバスでのエピソードもよく分からん…。
最初はテーマ的にも良かったんだけど…、
フレンチアルプスで起きたよく分からないことであった。
人間くさくて良かった
雪崩が怖い、ということしか知らずに、ディザスタームービーかと思って観たら、思ってたのと違ったけど、ある意味そうだった。
じわじわじわじわ、雪崩が起きそうな気配、あの音楽怖い、音楽以外の色んな音も異様に怖い、余波が起きたり・・・
ポランスキーのおとなのけんかみたいな、それをもっとエグくしたような感じがした。
旦那の情けないところ、奥さんの嫌らしいというのか、子どもっぽいというのか、あんまり良くないなぁっていうところ、容赦ないなぁ。
子どもが子どもらしくて良かった。
おねぇちゃんがゲームしてる横で弟がベッドでぐんにゃりしているところのぐんにゃり感が良かった。
子どもの時に家族で毎年スキーに行っていたという個人的な記憶ともなんだかはまって、スキー場の静かな感じとか、リフトの上の心細い感じとか、リフトが柱を越す時のガッチャンって音とか、うわ〜っとなった。懐かしい。
あんな豪華なホテルじゃなくって部屋の中でもタオルが凍るようなところだったけど。
弟が裸でアイス食べてるシーンは、どんだけ室内あったかいんだと思った。
人間の情けないところがいっぱい描かれてるけど、そういうのに対する愛も感じた。結婚して子どもを持つのも悪くないかもしれないと思った。
最後はまたちょっと突き放されて終わった感じで、クールだった。かっこいいんだか悪いんだか分からないラストの行進シーン。不思議に清々しかった。
結果的に女性の味方をしてる映画です!
ぎっくり腰なせいか、大人の階段をもう一段あがる日が近いせいか、この主人公の男(パパ)にむっちゃ苛々したので、ちょいちょい鬱憤が爆発する形でネタバレしてしまうかも。
すみません!
意図的に雪崩を起こして被害をなくす爆音からの、"地獄の黙示録・ワルキューレの騎行"並に、何かが攻めて来るような不穏な音楽から始まる冒頭。
調べたらヴィヴァルディの「四季」2曲目、「夏」らしいです。
ご存知の方も多いと思いますが、この四季にはビバルディ自身がつけた詩(ソネット)がありますよね?
すみません、イタリア語は色と素材しか分からないのでググりました。
第一楽章
太陽が照りつける厳しい季節に
人も羊の群れもぐったりし
松の幹も燃えるように熱い
よく通る声でカッコウが鳴き出すと
それに合わせて
キジバトとゴシキヒワは唄い出す
心地よくわたるそよ風を
突然立った北風が押しのけ
ひと荒れ来そうな嵐におびえる
羊飼いの子は不運に涙を流す
本作は"突然たった北風&そして嵐に怯える羊飼いが不運に泣く"作品です。
ほんと118分のうち、100分くらいは、凹んで鬱々とし、最後には嘘泣きする男(パパ)の姿を観せられます(笑)
そして面白いのは、"突然""不運"と思っているのは、この男(パパ)と一部の男性観客だけという点です。
両親とまだ幼い娘と息子の4人家族が、フレンチアルプスに休暇に訪れたことから始まります。冒頭書きましたように、ドーン!ドーン!って爆音がなり響く中、家族4人がテラスで食事をしていると、ドーン!つって雪崩がこっちに!
ママは子供2人を抱きしめて守ろうとするけど、パパは「パパー!」って子供が叫んるのに、他人を押しのけてスマホだけ握って逃げます。
自分一人で。
でも大事にはならなくて、みんなほっとして食事のテーブルにつくんです。パパも何食わぬ顔で、テーブルに戻ってきます。
誰もパパが"一人で逃げた"ことに言及せず、妙な空気感のまま食事終了。
でもママの顔にははっきりと、"こいつ逃げやがった"って書いてある(笑)
パパだけなんとか北風をやり過ごそうって、"いや俺やり過ごせてるっしょ感"を前面に押し出しているけど、ママの"こいつ逃げやがった""こいつ逃げやがった"っていう負のオーラはどんどん濃くなります。
子供達もその不穏な空気に気付いて、「ママ、パパと離婚しないでね」とか言ってきます。
この子供達の反応(怒って両親と口きかない)から、この両親ってこんな感じで普段から喧嘩してるんだろーなー、繰り返してるんだろーなーって想像できます。
その負のオーラが頂点に達するのは、パパがホテルで知り合ったカップルに雪崩の話をしてるときです。
「あなた逃げたじゃん」とママ。
笑い止まんなーい。あんた何言ってんのー?的なテンションで、ママが切れます。
顔は笑っていますが、そこが逆に怖いです。
パパは「逃げてない」と言い張ります。
僕は逃げてない。君は逃げたって認識なんだろうけど、君の認識を僕に押し付けるな。僕は君じゃないんだから、同じ認識ではいられない。くどくど。
はぁ?って感じですよ。
論点をすり替えただけではなく、ママを責めてるからね!
むかつきません?
パパは絶対に、逃げたって認めないの。
逃げてるのにね。必死で逃げたのにね!
「スキーブーツで走れなかったから、逃げられないよ」とか言って(笑)
言い訳がまたむかつくでしょ?幼稚でしょ?
逃げてるのに!
その後スマホに、スキーブーツでバタバタ逃げてく音が録音されてるのが判明するんだけど。
ママは、他のカップルを巻き込んで「ちょ、どう思う?」とパパを追い込むんですよ。
パパが悪かった!って泣いても、「涙出てないよ」て(笑)
囲い込んで、別な意味での壁ドン!状態のパパは、なんと、他の女に目移りしたりするんですよ!
はぁ????ですよね。
ね?そもそもこの男って、ピンチからはこうして逃げるタイプなんですよ!
たまにファミレスとか行くと、ママが自分は食べられず、必死に小さいお子さん達にご飯を食べさせてる横で、パパが知らん顔で自分のご飯を食べてる姿とか見かけます。あ、先に自分が食べて、ママと交代するのかな?って思うと、次はスマホを弄り始めるとか。
要するにこんなパパ達は、男としても、夫としても、父としても未成熟なんですよ。
フランス語の原題は「FORCE MAJEURE」ですが、意味が"不可抗力"です。
これって、契約当事者が債務と履行する上で、とても想定できない出来事が起こった際には、法律上は債務履行の責任を負わないとすることです。
つまり免責事項ですね。
※著名な映画評論家さんが、「地震、洪水、台風などの天災があった時、保険会社は免責(保険を払わなくていい)」と仰ってましたので、僭越ながら訂正をさせていただきます。
保険会社が定める天災の免責は3つだけです。
1:地震
2:噴火
3:津波
これ三大免責といいます。
洪水や台風を免責としている保険会社を、私は知りません。
しかし、火災保険で地震特約、車両保険に地震噴火津波危険特約がついていれば有責となりますので、まずは保険会社に問い合わせを。
すみません、話が逸れました。
つまり本作のタイトルはこの未成熟な男、未成熟な夫、未成熟な父の行為を、地震や津波や噴火と同列だと言っているんでんでしょうか?
あのー、いつから4大免責に変わったんですか?
4:男の未成熟さはどうしようもないから免責!
4:男は女性と違って本能で子供を守る習性はないから免責!
はぁ?
いやいやいや……。
そもそもこの男の言動は幼稚で自分勝手で、実力が伴わない癖に自尊心だけ強くて、自分の間違いは認めず、逆に他人のせいして、別な意味で壁ドン!になると、他の女に行こうとしたり、嘘泣きで何とか切り抜けようとするお子ちゃまパパですよ。
だからこのパパの行動は、決して想定外だとは思えません!
こんな男だから逃げるんだよって、本作の全てが証明してるんですよ!
これが、完璧な夫や父像を描いてからの逃走であれば、"不可抗力"のタイトルが生きてきますけどね。
故に元損保人としては、このパパの行動は免責とは認められません。
有責です!土下座で平謝りが妥当だと思われます。
でもですね。
ラスト、ある事件が起こるんですよ。
今度はママに。
先ほど申し上げました、完璧な夫や父像を描いてからの逃走であれば、"不可抗力のタイトルが生きてくる"
このタイトルは、パパに対してではなくママの行動を肯定していると思いました。そう!結果的に本作は女性の味方をしてると分かり、少し溜飲が下がりました。
にしても、苛々がつのる映画でした。
取り合えず、牛乳飲みます!
描写を楽しむ映画?
話だけ見るとつまらない
でも心情の見せ方が非常にうまい
わざと不安定なスキーリフトの金具で気持ちの揺らぎを描写したり
最初はゆっくり動いているリフトが急にスピード上がって気持ち高騰を表したりと
話ではなく気持ちの移り変わりを楽しむ映画かな
視点を変えて見れる人には観てもらいたい
ただ真っ先にバスから降りた奥さんの行動は
最後の旦那の表情から見ると
「人間ってそんなもんだよ」って事ですかね
子どもの描き方がとてもおもしろい
この映画はこんなふうに紹介されることが多い。「スウェーデンの一家がフレンチアルプスにスキー旅行にやってくる。昼食をとっていたとき、目の前で雪崩が発生する。大丈夫と言い張っていた父親が、子どもと妻を置いてひとりで逃げ出してしまう。そのことが原因で家族がばらばらになってゆく」。
そう説明するのがいちばん簡単なのかもしれないが。
私は子どもの描き方がとてもおもしろいと思った。子どもは父親が自分たちを守ってくれなかった、ということに対してだけ怒っているのではない。そこが妻の態度とは大きく異なる。妻は家族を守るべき父親が自分たちをほうり出して逃げた、ということに対して怒っている。
子どもたちは、少し違う。
雪崩のあと、ホテルへ帰ってきてからの態度がまず微妙。母親にも反発している。母親といっしょになって父親を批判するわけではない。母親が子どもたちへの気遣いをみせたとき、子どもたちは「ほっといて」とすねる。子どもは子ども同士で団結する。
次の日、スキー場へ行く途中、息子が父親に「ママと別れないで」と言う。子どもは父親がとった態度に怒っているのではなく、両親が、子どものことを忘れて、自分たちの関係だけに夢中になっていることに対して不安なのだ。
雪崩がおさまって、家族が全員無事だったことが確認できた。でも、そのことを両親は喜ばず、いきなりけんかをはじめてしまう。ホテルに帰ってきてもけんかをすることが先に立って、子どものことをかまってくれない。部屋に子どもを閉じ込め、廊下でけんかする。「部屋に知らない男がいる」と訴えても聞いてもらえない。(清掃係が部屋を掃除している。)パパとママが両親ではなく、男と女(夫と妻)になってしまっている。自分たちの問題で忙しくて、ぜんぜんかまってくれない。両親から捨てられた気持ちなのだ。
両親がどんな人間であれ、いっしょにいること、自分のことを思ってくれることが、子どもにとっては大切なこと。家族が互いを大切に思うことが大事。だから、父親が泣き崩れたとき、妻は「ばかな男」という感じで冷淡に見つめているのに対し、子どもは「パパ、大丈夫だよ」と必死になってなぐさめる。いま、自分が父親を支えることができると本能的に理解して父親を抱きしめる。「ママも来て」と呼びかける。
子どもは夫婦のかすがいというが、それ以上のものである。「パパ、ママ」と呼ぶ以外の台詞はほとんどないのだが、この呼び声の切実さが映画にリアリティーをあたえている。
映画の大半は、男女の関係を中心に「夫婦とは」「家族とは」というようなことが、もっぱら妻がリードする形で、ホテルで出会ったカップルとのあいだで、「ことば」で語られる。主人公一家の男と女の関係が、父と母、男と女(恋人)という関係に解体(?)されながら語られるのだが、そのときの「ことば」が問題なくすごしてきた恋人のあいだにも影響をあたえる。かなり冷徹で、ブラックな笑いを誘う。そこがおもしろいのだが、ああ、スウェーデン人というのはこんなふうに何でもことばにしてしまうのかと思うと、笑うより先に奇妙に感心してしまう。「気持ち」というのは「ことば」にしてしまわないと整理がつかないものだけれど、「ことば」にするということと「声」にするということは違うだろうなあ。
「パパ、ママ」としか言わない子どもの方が「気持ち」を確実に伝えているなあ。
いろいろなことがあって、最後のバスで帰るシーンがおもしろかった。運転手がへたくそである。いつがけ下に転落するかわからない。不安になる。妻の方がパニックを起こし、「おろしてくれ」と叫ぶ。それにつられて乗客はひとりを残しておりてしまう。おりて歩きはじめる。歩いている途中で映画は終わる。
映画はこのことについて何も言っていないのだが(登場人物のだれもこの行為について語ろうとはしないのだが)、これは冒頭の雪崩のシーンの逆である。妻の方が自分の本能が知らせる驚怖を抑えきれなかった。今度は妻が家族をおいて逃げたのである。バスのなかだったので、たまたま「逃げ方」が違ったが、彼女が真先に驚怖におそわれ、行動した。ひとは何に驚怖を感じるか、そのときの感じ方の違いは「定型化」できない。
このとき、あの道を歩いている人たちは、何を思ったのか。とぼとぼと歩いている。そのとぼとぼ感、疲労感のなかにある「和解」のようなものが、とても不思議である。妻が全員を事故から救ったのか。それとも、全員がパニックを起こした女を救っているのか、よくわからない。わからないまま「一家」になって歩いている。このわからなさに★一個を追加した。わからないけれど、人間はそういうわからないことをするのもだということを、ほうり出すように描いている。そこが傑作。
過ちを認めて悔い改める(且つ謝る)ことと、謝罪を受け入れて(取り敢えずでも)許すこと
バカンス先での旦那の不甲斐ない且つ利己的な行動で、絵にかいたような幸せな家庭の、というか夫婦のバランスが崩れる話、位の理解で見に行ったので、もうちょっと夫が父親の威厳回復の為に奔走、空回り、葛藤、反省して、なんやかんやで仲直りするコメディだと思ってたのですが、違いましたね。
謝ることと、許すことの葛藤に焦点が当たってると感じました。許すってのは、完全に水に流して、無かったことにってわけじゃなくて、怒りのマイレージには確実に加算され、(しかもポイント10倍デー)貯まってはいくけど、取り敢えず生活に支障がないように、刀はおさめる【許す】ですが。
夫は、質が悪いのか素直になれないのか、単なる見解の相違であると主張し、逃げた事実を丸ごと否定して、
妻は、最初は失望しつつも、認めて謝って欲しかっただけっぽいのに、夫の謎理論に更に怒り失望し、関係を修復しようとするんじゃなく、喧嘩に勝とうと、第三者巻き込んで夫を追い詰めるたり、
はたまた一人になって物思いに耽ったり、知人の人生観を否定することで自分を保とうとしたり、迷走する様は、中々病的。
最期の妻が吹雪のなかで前後不覚になって、旦那が助けて、一件落着みたいなのは、
子供たちを安心させる為の、妻の狂言なのかな?
彼女はよき妻、よき母としての自分を選んで生きていくって決めたんでしょうか…。
最後のバスのエピソードがよくわかんなかったのですが、バス降りた直後は、バス止めさせて、降りた奥さんが正しいみたいなムードから、
道を歩き始めたら、 舗装された道路とはいえ、山の途中で孤立し、 寒いわ、しんどいわで、若干降りたの間違いだったんじゃみたいな感じになってたから、
下山後も平穏無事とは行かない暗示ですかね。
自由奔放な人妻がバスに残った意味もあんまりよくわかんないですが。
とことん話し合って、膿を出すというのは、実際はなかなか難しく、
別れるつもりがないなら、落とし処さがして喧嘩を終わらせないと、余計終息できずに長引いて病んじゃうなーと思いました。
(妻は別れることを検討してたろうけど。)
堂々巡りで同じことが繰り返されるので、途中ちょっと退屈でしたが、色々考えさせられますね。
笑える所もあり。
雪山は綺麗で、子供は最初の糞生意気なところ以外はかわいい。
善良な人は知らぬが仏。
夫婦者は観たらあかん映画ですね。仲良しでも、壊れかけでも、よい影響はないかもねー。特に一緒に見るとあかんですねー。愛想尽かしかけで、別れの突破口が欲しいなら観たらいいと思います。
この映画をにやにや笑えるのは、性格悪いひとりものでしょうね。私の事ですが。
大まかにいうと5日間の休暇で起きたある一家の悲劇です。
2日目の昼に雪崩が起き夫トマスは自分だけ逃げました。パパ!と息子が叫んでるのに逃げました。
まぁ小者ですわねぇ。妻はともかく子供に脇目もふらず、一目散で逃げたんですから。
しかし、その後の行動が輪をかけて良くない。
妻エバに逃げたわよね?と、詰め寄られるも、逃げてないよ、現象に対しての君と僕との認識の違いだとか御託を並べて誤魔化します。それも複数回。その度に険悪さも増していきます。
子供たちも親の険悪さを察知して機嫌が悪くなる…
あぁ、休暇台無しです。
3日目の晩、ヒゲの友達とその若い恋人がいる前で、エバは三たびトマスが雪崩の時に自分だけ逃げたことを持ち出し、トマスに逃げた事を認めさせます。証拠映像と第三者の客観性にて言い逃れできなくなって渋々認めます。
その晩アホ面で一人泣くトマス。化けの皮がほぼ剥がれてきます。
翌日の晩、相変わらず冷たいエバに怒りとともに懺悔をしますが、嘘泣きからのみっともない号泣を晒しエバはドン引き。どっかの県の県議の号泣釈明会見かっちゅうダダ泣き。哀れみを誘うための泣きで、見てるこちらもドン引きでした。
あんまり泣くのでエバはとりあえず落ち着かせようと、部屋に入れますが、効果なし。親のケンカが一番辛い子供らも、すでにベッドで泣いてます。なんか知らんけど、トマスの泣き勝ちみたいな四人の泣き抱擁で最後の夜が終わり…
5日目の朝、ひどい天気のなか最後のスキーをしようとする一行。ゆっくり降りるも案の定、禁止区域に入りエバがはぐれます!!再びのピンチにトマスが無事エバを助け、強引な面目躍如で休暇終了。
さて帰りのバスではヘアピンカーブを曲がりきれない運転手の危険運転に我慢できず、エバが車を止めろ降ろせ!と要求し、つられて殆どの乗客が降ります。
1人(1人でバカンスにきて行きずり情事を楽しむ女・夫子供あり)のみがバスに残り、他の乗客はほぼ上着もなく山道に残ります。取り残されたと言ってもよいかも。
降りた時は言い出しっぺのエバが正しい空気だけど、徒歩で山下りしながらみなさんビミョーな面持ち。あれ?バスに残ったあの人の一人勝ち?みたいな。
そして非情にもここで映画は終わります。
ラストのエバの行動は、雪崩で1人だけ逃げたトマスとかぶるような気がして、帰国後にまた揉めるんちゃうかなぁと思いました。同じ穴のムジナですねぇ。エバはどうフォローするんでしょうか?
確かにトマスのいい夫っぷりはハリボテ
でしたが、エバも怪しいのか?という暗示に思えました。
そして、子供たちですが、奴らもまぁ利己的です。自分らが親に別れて欲しくないもんだから、ねぇ。芝居がかった泣きで母を丸め込もうとする。そこに悪意はないでしょうが、いたいけなともいいきれませんぜ?
あれあれまさかの自分だけよければ良い、ってやつですか?え?え?あなた方が後生大事にしてる愛だの絆ってやつはそんなもんでっか?
結局、人間は自分だけが可愛いのです。その醜さ弱さを直視したいもんですね。認めてしまえば強さでもありますよ?はっきり言いましょうよ、自分のために生きてますねん、悪い?って。
そんな感じの感想を持ちましてね。まぁ、僻み含みなんでしょうが、一理あると思います。わたしはわっるい顔して高みの見物となりました。
劇中にでてくる無表情の掃除夫が観察者としてトチ狂った彼らを無表情に見つめます。これがなんとも笑えました。
ヒゲの友達とその恋人のケンカも笑えました。あの人ら帰国したら絶対別れるw
性格悪い人は是非見て、無自覚な偽善を笑いましょう。ストレス発散に最適です。
旦那針のむしろ
ちょっとしたボタンの掛け違いから、絶えず奥さんが"これでもか〜"とばかりに虐めるから、旦那立つ瀬なし。いや"針のむしろ"状態が延々と続きます。
この映画が面白いのは。前半に「裏切られた!」とゆう気持ちが強く、人知れず苦悩を重ねていた奥さんが、旦那を執拗に責め立てる事で生まれる絶望感。だが後半になるにつれて、今度は旦那に感染して行き、いつしかその立場が逆転して行くところ。
観ているこちらとしては、「一体全体どうなっちゃってるんだよ〜!」状態が続くのですが。そこに至るまでに、かなり苛々を募らせていた観客の気持ちを、旦那が醜態を晒す事で喜劇性が一気に加速。しばしば失笑させる事で笑いが生まれて行き、観客の緊張感を解す事に繋がっています。
特に最後の手段とばかりに、旦那が"奥の手"で奥さんの機嫌を直そうとしますが、(本編中に描写は無し)奥さん無表情。旦那は唖然。
いやいや思わず笑ってしまいました(笑)
実は映画の前半部分から、イングマール・ベルイマンの『ある結婚の風景』を思い出しながら画面を見つめていました。
ちょっとしたボタンの掛け違いから口論に発展し、どんどんと夫婦仲が悪くなって行く下りや。中盤で友人のカップルが登場しては、その2人にもその余波が及び、口論になりかかる辺り。
「あ!これベルイマンぽいなあ〜」と、思わず当時に観た時の感覚を思い出していました。
最後に『ミスト』の様な絶望的な終わり方をさせるのか?と思わせたり、あのカップルが初めて登場する場面で実は…とゆう絡ませ方を含めて。この監督は、観客の思惑を度々すかして来る辺り、かなりしたたかさを感じますね。
(2015年7月6日/ヒューマントラストシネマ有楽町/シアター1)
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