「【”元気で何より・・”愚かしくも愛おしい、市井の人々の姿を、シュールな笑いの要素を絡ませて描いた掌編集。】」さよなら、人類 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”元気で何より・・”愚かしくも愛おしい、市井の人々の姿を、シュールな笑いの要素を絡ませて描いた掌編集。】
ー ロイ・アンダーソン監督作品は、2020年に公開された「ホモ・サピエンス」の涙を、劇場で鑑賞して以来、今作で2作目である。
劇場で見た際には、内心クスクス笑いながら鑑賞したのだが、途中退席する人もいて、この監督の独特のシュールだが、人間愛に溢れた作品を受け入れるかどうかは、人に寄るのかなあとも思ったりした。-
◆感想<Caution ! 内容に少し触れています。>
・面白グッズ(で、全然面白くない。吸血鬼の歯や、歯抜け親父の覆面、笑い袋etc.)を売る、二人の男をストーリーの軸にしながら、様々な人々の愚かしくも、愛しき姿を描いている。
・印象的なフレーズが、劇中良く出てくる。
全然幸せそうでない人達(あるシーンでは、拳銃を片手に持った初老の男性が電話で言っている。)が、相手に言う言葉。
”幸せそうで何より・・”
・臨終が近いお婆ちゃんが、大切なお宝が入ったバッグを手放さないシーン。クスクス笑い・・。
・フラメンコを教える太った女性の先生が、若き男性に”指導”をしながら、身体中をいじるシーン。
そして、別のシーンで、その先生が若き男性に別れを告げられ、泣くシーンの前で講演を聞けなかった男性が電話するシーンが繰り広げられる。
・1943年、バーで軽やかに”一杯、一シリングで飲めるわよ!”“お金の無い人は、代わりにキスで払って!”と言うシーンを見ていた男性が、40年後によぼよぼになりながらも、その店で、酒を飲んでいる姿。
・一番好きなのは、現代のバーの前を、スェーデンの国王と思われる一団が進軍し、若き国王がバーに入って来て、水を所望するシーンからの、ロシアにこっ酷くヤラレタ国王一団が戻って来るシーンである。何だか、凄くオカシイ。
<ロイ・アンダーソン監督の、人間愛溢れるクスクス笑えるシュールな笑いに包まれた作品。
―それは、愚かしくも、日々真面目に生きる人々の悲喜劇を様々な視点で、描いている事から分かる。-
登場人物が、誰も笑顔を見せず、青白い顔の人物が多いのも、今作があって「ホモ・サピエンス」に繋がったのだなあ・・、と分かった作品である。>