「メイド・イン・マイ・カントリー」鰻の男 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
メイド・イン・マイ・カントリー
製作総指揮と脚本を担当したキム・キドクらしい作品。いい意味と悪い意味で。
中国でウナギの養殖業を営むチェン。
韓国へ輸出したウナギから水銀が検出され、仕事に大打撃。父は倒れてしまう。
納得いかず、再検査を求めウナギを持って韓国へ密入国するほど、“ウナギを愛する男”。
韓国の食品安全庁を訪れるも、門前払い。ウナギも粗末に扱われる。
そんな彼を気に掛ける美人室長のミ。
ある日、半ば強引な形で検査を迫られ、結果は変わらず。
ショックを受けるチェン。
同情したのか彼を誘い、関係を持つ。美人だけど男を寄せ付けない氷のような性格だからか、欲求不満…?
で、彼女の紹介で柄の悪い連中と怪しげな建物の警備の仕事を。
そこで知った衝撃の秘密とは…!?
水銀ウナギを巡る中国~韓国の闇を炙り出す社会派ドラマではあるのだけれど…、
もっとそれをメインに据えた硬派な社会派サスペンス・ドラマが見たかった。
何と言うか、チェンとミの「??」なラブ関係あったり、
韓国を訪れたチェンの数奇で残酷な運命だったり、
密入国船で一緒になった男から、自分を捨て韓国に渡った妻へ復讐して欲しいと頼まれたり…
社会派サスペンスであるような、残酷なドラマであるような、シュールなブラック・コメディであるような、“らしい”が、時々主軸がブレブレ。
でも、キム・キドクの狙いは別にあったのかもしれない。
劇中でもあったように、自身の国でありながら韓国という国を痛烈に批判。
ただ潔白を証明したいだけにやって来た異国人に、非道な仕打ち。
チェンが知った事実やラストは余りにも悲しい。
この国は腐っている!
その一方…
チェンとミは言葉が通じない。ほとんど会話ナシでやり取り。
それでも惹かれ合い、悪徳業者に加担していたミもチェンと知り合ったきっかけで自身のやっている違法な事を改め直す…。
隣同士の国。必ずや分かり合える。
まだまだ闇は深く、重い。が、ラストシーンのミは自ら…
我々もつい、中国産と聞くと怪しんでしまう。
確かに中国産には怪しいもの多々。
でも、全部がそうではない。
チェンのように安全品質に尽力する人だって勿論居る。
自信を持てる“メイド・イン・マイ・カントリー”を。