「どろっ。」劇場版 BiSキャノンボール2014 Noriさんの映画レビュー(感想・評価)
どろっ。
総論として、笑ったは笑ったんだけど、すごくほろ苦い作品だった。
アイドルグループ'BIS'の解散ライブ前後、6人のメンバーに6人のAV監督が密着。BISメンバーには知らされていないが、決められたルールの下、監督達はBISメンバーとの関わりの中でポイント獲得を目指し競う、という二時間。
SSTV(CS)版の第一ステージを見た上で鑑賞(劇場版は第三ステージまである)。
この↑事前に見たモノのテイストだけなら、ただただ笑えるね、楽しいね、で通り過ぎていった作品だと思う。
映画館で本編を観て、笑えるだけでは終わらない、ドロッとしたものが胸中に渦巻くのを感じる。心地よくはない。
解散という最後の最後、アイドル界の異端児・BISを、キレイな、感動モノのラストだけでは終わらせない、異質なモノ(AV監督)との化学反応を見せたい、見てみたい、という思惑があったのか。
カンパニー松尾監督のヒット作「劇場版 テレクラキャノンボール2013」に触れ、BISの運営サイドやプロデュースしたSSTVには、二匹目のドジョウという側面もあっただろう。
監督達にも、楽しむ、ということ+αで、当ててやる、という気持ちがあったと思う。
BISメンバーは研究員(ファン)の為に最高のモノを見せたい。AV監督達はどれだけアイドルに踏み込めるか、自分にしか撮れないモノをカメラにおさめたい。
ベクトルは違うが、それぞれ最高のパフォーマンスを目指していたはずだ。
もともとタガが外れているAV業界の人々、特に今回の出演者の一部は、常人の計り知れない思考回路で行動化し、アイドルを攻めていく。解散コンサートの前日に…。
予想されるように、円満にコトが進むはずもなく、両者には暗雲が。
私がスゴイなと思ったのは、最後の最後まで仕事を完遂しようとカメラを置かない監督達の姿だ。
暗雲立ち込める中(何故、どのように、は劇場でご確認下さい)、あわよくばポイントを重ねよう、それを越えるパフォーマンスを収めようという、自身との闘い。
カメラを置かないのは、プロとして当然のことなのだろう。しかし、置かないことが正しい、とは感じない人もいるはず。
正義なんて割り切れるものではない、単純なものではない、ということまで考えてしまう。
この作品の判断は、最終的には一人一人の観客に委ねられる。そして、他では観ることのできない作品に仕上がっていたことだけは間違いない。