劇場公開日 2016年3月12日

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「喜劇 家族はつらいよ」家族はつらいよ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5喜劇 家族はつらいよ

2016年8月7日
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鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

幸せ

「男はつらいよ」以来となる本格山田喜劇。
あれ? 寅さんのすぐ後に「虹をつかむ男」って無かったっけ?…と、まあ、それは暗黙の了解という事で(^^;
本格喜劇と言ってもいつも必ずユーモアがあるのが山田作品なので特別久し振りという気はしなかったが、見て納得、確かにこれは久し振りの山田喜劇だ!

ある老夫婦の熟年離婚と振り回される家族のてんやわんや。
最初から最後まで、ちょっと惚けた、ついクスッとなるような、ベタでもあるような笑いの盛り合わせ。
自身の代表作を彷彿…と言うかそのものスバリのタイトルからも窺い知れる。
勿論、山田作品に一貫している家族を見つめたドラマも根底にしっかりとあるが、割合的に約7:3で笑いの要素が強い。
例えば、義父がオレオレ詐欺に間違えられる冒頭なんて、きっとニュースで見ててこれは笑いに使える!…と山田監督の悪戯小僧な部分が何だか見えて可笑しかった。
今の世だから抑えられているものの、寅さん時代だったらもっと過激であったろう不謹慎な笑い。つまり、寅さんでもよくあったまだ死んでないのに葬式の相談をするってやつ。私はこれをブラック山田と呼んでいる。(たった今命名)
終盤の家族会議。本来ならピリピリムードをチクチクした笑いで緩和。
ここずっとシリアス作品が続いた山田監督だが、リラックスして楽しそうに撮影している姿が浮かんだ。

可笑しさに拍車をかけているのは、キャスティング。
だって、シリアスに家族を問うた「東京家族」と全く同じキャスト&設定なんだもの。
親夫婦、橋爪功と吉行和子。
長男夫婦、西村雅彦と夏川結衣。
長女夫婦、中嶋朋子と林家正蔵。
次男に妻夫木聡、その恋人に蒼井優。
ついでに飲み屋の女将に風吹ジュン、橋爪功の学生時代の悪友に小林稔侍まで!
同家族で今度は喜劇を作ろう!…なんて、それが一番笑えるかも。(「東京家族」を見ておくとまた良し)
役の性格もちょっと変わってたり、中には180度真逆だったり。
例えば、厳格だった橋爪父はひがみたっぷりの頑固親父に。(橋爪功が名喜劇役者!)
開業医で真面目だった西村長男は頼りないサラリーマンに。
定職に就いてない困り者だった妻夫木次男は親思いの真面目な息子に。
(尚、「東京家族」で父とソリが合わなかったのは次男だったが、本作では長男に)
長男の嫁は変わらずしっかり者と思いきや、両親の離婚=子供たちの受験に悪影響と本音が漏れるリアルなママに(笑)

長年連れ添った妻が切り出した離婚の理由。
うう、世の夫たちにはじわじわボディーブロー。
でも、それは本当は…。
突然の家族騒動記に巻き込まれたような次男の恋人。
その所々のフォローに、家族の在り方をほっこりさせるものがあった。

笑いのレベルが古臭いとか時代錯誤とか言われてるけど、個人的にはこういうほのぼのとした笑いの感じは好き。
この一家には飼い犬が居て、何とかを食わないとか、雨降って地固まるな最後とか。
オマージュや小ネタもちらほら。あの名作で締める“終”は憎い演出。
欲を言えばあの作品のようにもうちょっと時間を削っても良かった気もしたが、面白かったからOK!
“コメディ”じゃなく、“喜劇”って言葉がぴったりの、これぞ昔ながらの“日本の喜劇”!

先日、続編の製作が決定。
確かにこの家族の続き、見てみたい。
「続・家族はつらいよ」とか、
「家族はつらいよ 周造奮闘篇」とか、
「家族はつらいよ 庄太恋やつれ」とか(笑)

近大