ギリシャに消えた嘘のレビュー・感想・評価
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ラストがちょっとあっけない
ツアーガイドの青年が旅の途中の裕福そうな夫妻に出会って、3人の運命がとんでもない方向に流れていく話。チェスター(ヴィゴ・モーテンセン)のアイボリー色の麻スーツと革のスーツケースがアテネの遺跡に妙になじんでました。
サスペンスタッチではらはらしたけれども、ラストは「これで終わり?」という感じで物足りませんでした。短い時間にまとまらなかった感があります。チェスターとライダルの関係性をもっと描いてからじゃないとラストが生きてこないかも。と、自分は感じてしまいました。
でも、地味ながらも洗練された作品のように思い、「もう一度観てみようかな」と思える映画。
妻のコレット(キリステン・ダンスト)に関しては、美人の若い妻という設定ですが、それほど美しいとは感じなかったです。夫妻が「親子ほど違う」という表現もありましたが、ヴィゴ・モーテンセンがいかした紳士で、初老(という設定なのだろうが)でも、そんなに老いぼれてなくて、それは違うんじゃないかと思ってしまいました。^^;
ラストのチェスターの言葉が印象的。
「夢や希望が指の間を通り抜けていくんだ。彼女のような存在が唯一の支えになる」
確かに、コレットは茶目っ気あってしたたか。きっとそんな女性だったんだなあと感じました。
原題の”The Two Faces of January” チェスターとライダルのことなのだろうか。
トラブルに巻き込まれた卑しい青年の物語
原作者は「太陽がいっぱい」を書いた人ということで興味を持って鑑賞、確かに青年の描き方には似たような臭いがしたのだが、主人公が詐欺師の小悪党、青年も小銭をくすねる観光ガイドで他人の妻に横恋慕、感情移入しようにもチープ過ぎる。
犯罪と言っても投資詐欺で逃亡中の弱みがなければ正当防衛か事故で済む話、こそこそ逃げなくとも堂々とチェックアウトすれば旅券の心配もないし、その日のうちに高跳びできるでしょう、まるで運命の皮肉のように悪い方へ悪い方へと展開するのもわざとらしい・・。
サスペンスと言う程謎もないし結末でのカタルシスも感じない、トラブルに巻き込まれた卑しい青年の物語といったところでしょう。
ヴィゴは鯛。
P・ハイスミス『殺意の迷宮』の映画化。
ギリシャやトルコの美しい風景をバックに描かれる愛憎劇。
ここでのヴィゴは白づくめの詐欺師役だが、これも似合うv
クラシカルな背景にクラシカルな名優がズラリ揃った感じ
で奥様役のキルステンも青年役のオスカーもハマっている。
サスペンスよりも逃避行を巡って三人が織りなす心理的な
愛憎のぶつかり合いが見せ場で、いわゆる三角関係に近い。
美貌の妻を寝とられたと思い、青年に八つ当たるヴィゴなど、
今後どの映画で観られるか分からないのでお薦めしときます。
後半はイスタンブールの街を逃げまどうヴィゴをも拝見でき、
まぁ腐っても鯛。ってのはこういうのを言うんだな^^;なんて
ほくそ笑めること請け合い。個人的にご贔屓なオスカーは
現在公開中の作品でも騙されてるという気がしつつ、いい男
は騙しても騙されても◎なことを実感できるいい教えになる。
(しかしいずれ天罰は下るのよ。悪さをすればどこかで必ずね)
ハイスミス
旅行中の初老の男(ビゴ・モーテンセン)と、その妻(キルステン・ダンスト)、ガイドの若い男(オスカー・アイザック)。
男二人が、女を取り合ってる風な話ではあるが、実のところ、女はどうでもいい。
冒頭でもラストショットでも、見つめ合うのは、男と男。
相手の男の後ろ暗さを、互いに一発で見抜く。コイツのズルさを判るのは、オレだけだという負の連帯感。モーテンセンはアイザックに自分の若い頃を見、アイザックはモーテンセンに自分の行く先を見る。だからこそ、出し抜き出し抜かれを、繰り返す。
女は、男達の後ろ暗さに目をつぶる。気づかない振りをする。その方が都合が良いから。そんな女を演じるキルステンが、非常に上手い。
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ハイスミス原作。
ブロマンスなんて言葉が無かった時代から、ブロマンスばかり書いていたハイスミス。ブロマンスというよりは、男同士の狂おしい共鳴と言った方が良いか。
見知らぬ乗客、太陽がいっぱいの映画化では、その部分を入れこむと話がややこしくなるのでストーリーには反映されていないが、男優陣が魅せる滴り(ロバート・ウォーカーなど特に)が、非常にハイスミス的で、ファンとしては、グハっとなる。
本作も、古臭いメロドラマ&ミステリの中で、静かなサイコを演じるモーテンセンが、非常にハイスミス的だなと思った。熱演!というよりは、ちょっと「軽さ」があって、そこも良かった。
アイザックが見せる、前半タクシーの中での酷薄な表情も、良かった。
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追記1:
古色蒼然とした映画の作りで、何だこれ?と笑ってしまう部分も無くはないが、それでも個人的には大変楽しかった(星の数甘めです)。
追記2:
ハイスミス原作の「The Price of Salt」も、ケイト・ブランシェット&ルーニー・マーラ主演で映画化されるそうだが、こちらは女性の同性愛の話らしい。
女性なのに、女性を嫌悪し、なおかつ同性愛者だったハイスミスが描いた物語は、どんななのか?ちょっと気になる。
これでいいのだ!
原作は未読。
冒頭に「(若い)彼がこちらを見てる」云々の台詞があった時。
「嗚呼!これは、この夫婦どちらかが片方を嵌める話かな?」と思った。
しかし、その後にこの夫婦それぞれが彼と単独で会話する場面があり、その思いは直ぐに消える。
「あれ?ひょっとして何も無い!」
いやいや実際にはこの後に、この若い彼は殺人事件に巻き込まれてしまうのだから、無い訳では無い。
結局この夫婦と、巻き込まれた彼との逃避行が、まるでロードムービーの様に展開される事となる。
今の時代、観客はちょっとやそっとの内容では満足しない。
ましてやこの作品の様な話だと。今時の観客からはどんでん返しの後には、更なるどんでん返し…とばかりに。手を変え品を変え、あの手この手のサービス精神を作品に盛り込まないと満足してはくれない。
製作側は斬新さを売りにし映像や編集に凝りまくる。結果として終始ダラダラとしてしまい、上映時間は長くなる。
何故こんな事を書き込むかと言うと、この作品がその様な手のこんだ事はせずに、シンプルに徹してしるからに他ならない。
話自体がそこそこ面白く、約100分の上映時間。
それ位がちょうど良い。
ちょうど良いって事は、抜群に面白い訳では無いので、声をだして「面白いですよ」等とは言わない。
寧ろ「目新しい事は何も無いです。」だし、「(特に何も無いから)時間潰しにはちょうど良いかも。」…と。
元来映画は娯楽なのだから、時間潰しにぴったりの作品が1番観るのには都合が良いと思う。
バカボンのパパでは無いが、この作品に関しては…。
「これでいいのだ!」
(2015年4/12日 ヒューマントラストシネマ有楽町/シアター1)
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