劇場公開日 2015年6月27日

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「全世界的置いてきぼり」レフト・ビハインド 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0全世界的置いてきぼり

2015年7月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

単純

目の前で突然人間が煙のように消えるという謎の現象が
世界各地で発生。大パニックに陥り、暴徒と化す人々……。
主人公レイ・スティールが機長を務めるジャンボ
ジェット内でも異常は発生し、さらにレイの娘クローイも、
ショッピングモール内で消えた弟を必死で捜索する。
果たしてスティール一家の、そして人類の運命は!

と、はい、まあね、そんなアラスジの映画なんですがね。
予告編で全然気付かなかったんですが、あらまあ、実は
これってキリスト教のとある派閥の布教映画だったんですね。
新約聖書の“ヨハネの黙示録”の一解釈という位置付け。
予告編を観てSFパニック映画を期待した方も居られるだろうが、
宗教色強いのはちょっとニガテ、という場合はご注意を。
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なるべくネタバレ無しで書くつもりだが、
早い話が『信じる者は救われる』っていう路線の話。
裏返せば、『信じない奴は知らん』っていう路線の話。

救われる人には条件があるのだが、映画を観る限りでは
どうやらイスラム教徒はハナから対象外らしく
(この点だけでもずいぶん敵を作りそうな映画)、
例え牧師さんであっても、心の底から神の存在を
信じていないと救ってもらえないらしい。
それ以前に僕は無神論者なのでもう完全にアウト。
厳しいのう。
というかこの映画の設定だと、全世界人口のうち
たぶん1/10も助からない気がしますけどね。参りましたね。
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まあ個人的にそういう選民思想的な考えはキライなので
そこでまずスコアを上げる気になれないワケだが、
それを抜きにしてもこの映画は色々とアレな部分が多い。

まず、異変が起こるまでの前フリがダラダラ長い上にやたら説明的。
序盤は主人公と娘とイケメン記者が空港ラウンジで延々と
家庭の事情を説明するばかりで、一向に話が進展しない。
やっと飛行機の中に話が移ったと思ったら今度は乗客や乗務員どうしの、
苦笑いで返すしかないようなジョークの応酬が延々続く。
そして何より、その間じゅう流れているBGMがなぜか′90年代の
海外青春ドラマっぽくて、これが絶妙な安さを醸し出している。

事件が起こってからは流石にパニック映画らしくなるが、
世界的な混乱に怯える娘の描写と、家族写真ばっか見てる
ニコラス・ケイジと、ヌルめの航空機パニックとを
やたら細切れにローテーションする流れで相変わらずテンポ悪し。
ラストも、設定上仕方ないとはいえ、『ここからが本番だ』的な、
なんだかふわっとした感じで終わる。

それと、演技。
僕は演技の良し悪しはそんなに分からないし、
外国人の演技となるとますます分からないが、
それでも分かるレベルの大根ぶり(苦笑)。
ちなみに英語で大根演技はハム(ham)と呼ぶそうだが、
この映画はお中元に贈られたら先方の奥様が「あらまあ
こんなに!」と喜びそうなくらいのハム詰合せセット。
脇役(特に子役や老人)だけでなくリー・トンプソンのような
一応のベテランでさえもちっとも気のない演技を見せるので、
演出してる側がよほどアレなのではという気はする。
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まあ、うん。そんなトコです。
色々ツッコミ所が多いので逆に面白く、眠りはしなかったものの、
個人的にはそんなにオススメはしません。
ニコラス・ケイジのファン、もしくはキリスト教の
聖書の解釈に興味をお持ちの方ならどうぞ。

<2015.07.18鑑賞>

浮遊きびなご