「言葉は凶器になり、音楽は武器になる。」セッション ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)
言葉は凶器になり、音楽は武器になる。
トップを獲りたい人間にとって情など必要ない。一流を目指すものにとって妥協など論外だ。例えチームワークが求められる楽団であっても、一人一人のパフォーマンスが完璧でなければトップは獲れない。要は戦いだ。
己と戦い、限界に挑む。これはそんなベタな映画じゃない。敵はあくまでも他者だ。指揮者という他者だ。敵は巧みな言葉で攻撃してくる。時には罵声、時には嫌味、言葉は凶器と化す。どんなに傷つけられようとも、どんなに追い詰められようとも、その相手を打ちのめすほどのパフォーマンスができなければ自分がやられる。勝つには音楽という武器を使って反撃するしかない。これはヒューマンドラマでもなければ、スポ魂ものでもない。トップを目指す者とベスト以上を目指す者とのアイデンティティをかけたアクション映画だ。
主人公の心を切り裂く言葉のナイフが劇中を飛び交う。ドラムという名の銃声が劇場に響き渡る。鋭いナイフと無数の弾丸が観客の感性を蜂の巣にする。何て恐ろしい映画だろうか。何て素晴らしい映画だろうか。見終わってからの興奮が未だに収まらない。監督のデイミアン・チャゼルは若干30歳。ハリウッドにとんでもない新星が現れた。
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