劇場公開日 2015年4月17日

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「マイケル・パウエルに捧ぐ」セッション Takeshiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5マイケル・パウエルに捧ぐ

2015年5月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

僕はこの映画、たいへん面白かったです!

僕はこの映画を見て、マイケル・パウエルの古典「赤い靴」を思い出しました。お若い方には「赤い靴」をリブートした「ブラックスワン」を上げた方が分かり易いかもしれません。

「赤い靴」も「セッション」も、芸に猛進する師と弟子の話です。
弟子を支配下に置こうとする師匠、それに翻弄される弟子。芸術の明るい面よりも、芸に取り憑かれた怖さを強く感じます。

ちなみにパウエルは、その怖さを掘り下げた「血を吸うカメラ」という傑作スリラーも生み出しています。「血を吸うカメラ」は、観客には受けましたが批評家筋からは不道徳だと批判されました。理性では受け入れがたい、自我の発露を描いていたからだと思います。

「セッション」も、善悪や愛憎では計れない自我の発露を描いています。音楽家はこうあるべきだという固定概念も揺るがしています。

そこに拒否反応を示す人がいても当然だと思います。かつて、パウエルを批判した人がいたように、いつの時代も受け入れられない人はいるのです。受け入れがたい領域を描いたからこそ、映画としての虚構の面白さがあると思います。

マイケル・パウエルは、ヒッチコックをはじめ、スコセッシ、ポランスキー、デパルマ、アロノフスキーなどの作品に影響を与えてきましたが、「セッション」もその影響下の一つと言えます。本作が「赤い靴」のように後世に残る傑作かは、僕には判断つきません。でも、そこを目指した若き監督の野心作と言えるのではないでしょうか。

Takeshi