「歩いて帰ろう。」ストックホルムでワルツを ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
歩いて帰ろう。
スウェーデンが誇る世界的ジャズシンガー、モニカ・ゼタールンドの
半生を映画化した作品。ジャズに詳しくない私は知らなかったが、
流れるジャズ音楽を聴いた途端、幾度もスウィングしたくなるほど
素晴らしい音楽が今作最大の特徴。本国で大ヒットしたのも頷ける。
実在のモニカを演じるのは、これも歌姫であるE・マグナソンという
女性歌手で(ご本人とソックリ)綺麗なうえに歌がめっぽう巧い!(美)
というわけで音楽面は難なくクリアの作品だが、ご本人の生活態度、
特にモニカの類稀なる上昇志向とその人間性には唖然とさせられる。
私は某日本人歌手を連想してしまったが、もちろん松田聖子である。
アイドル時代から第一線を守り今では大スターの風格すら手に入れた
彼女だが、その生き方の独善性には様々な噂を立てられた。そして、
その矢面に立たされたのは娘の沙也加である。成長した彼女が母親に
ついて語ったドキュメントでその冷静な態度に驚いたが、今作の娘も
母親に振り回されながら冷静な視点で見守るという微妙な立場だった。
頂点に立つ為には手段を選ばない(特に男性面で)娘と、頑固な父親の
葛藤対決シーンもどこかで見たような展開だったが、自身の夢を当に
諦めた父親が成功しようとしている娘をあそこまで貶める必要もない
だろうに…と、この部分ではただ父親に認められたいが為に公妃まで
上り詰めるしかなかったG・ケリーを彷彿とさせられた。子の人生は
親の有り様によって決まることが多く、反面教師になるのも血筋の技。
モニカの人生は吉凶混合だが、その歌声と音楽性は本当に素晴らしい。
(名立たるアーティストが次々と登場。鑑賞後は、さぁ「歩いて帰ろう」)