「空回り気味では?」野火 ほにゃららさんの映画レビュー(感想・評価)
空回り気味では?
見終わった直後は、すごい衝撃を受けた気がしたが、振り返ってみると、、、
原作はだいぶ前に一度読んだきりで、詳細は覚えていないが、主人公が極度の飢餓状態で、常に意識が朦朧としたままジャングルを彷徨うという印象だけが残っていて、その感じは再現されていたと思う。
しかし、映画は冒頭からかなり辛い状況で、主人公や周りの兵がまともな感情表現をしないため、イマイチ共感しづらい。
原作に忠実なのかも知れないが、普通の人間が変わってしまう様を描くというのなら、もう少し手前の日常描写を入れても良かったのでは?
また、予算の関係で周りを撮すまいとする配慮なのか、あえて狙った演出なのか、役者のアップが続いて、何が起きてるかよくわからない場面が多々あり、ますます映画に入り辛くなった。
自然の美しさとの対比を見せたかったようで、その意図は充分伝わってきたが、ドラック的な見せ方もちょっとクドい。
日本兵が大量に殺されるシーンは、プライベート・ライアン以降の超リアルな戦争映画と比べざるをえず、どうしてもチープに見えてしまい、かえってリアリティーが損なわれている。(手足がちぎれたカットはショッキングだが、その銃撃でそうなるかな?と思ってしまった)
予算が少ないならガチの戦闘シーンは避けて、違う見せ方があったのでは?
監督自身が主演も務め、別人のように痩せた姿は凄まじいが、パンフを読むと絶食のせいで演技する余裕もなかったらしい。
つまりそれは、監督として客観的な演出が出来る状態じゃなかった、ということ?
どうも監督の思い入れが強過ぎて、空回りしてる気がした。
「野火」という作品を全く知らない人には、いまひとつ伝わない映画だと思う。
(リリー・フランキーは出ていること気づかないくらい別人で、あとで知ってビックリした)