「誰が無念を晴らすのか」さまよう刃 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
誰が無念を晴らすのか
最愛の娘が殺された。
犯人の未成年者たちは少年法に守られ、重い罪には問われない。
父親は自らの手で復讐する…。
日本でも映画化された事のある東野圭吾のベストセラー小説を、韓国で映画化。
日本版は寺尾聰の熱演は光ったものの、ほとんど印象に残ってない。
日本映画らしくお堅くて湿っぽく、傑作にすらなり得る題材なのに、残念という感じだった。
さて、さすがはシリアス/ハードなサスペンスの国・韓国、日本版とは違うズシンとくるサスペンス・ドラマに仕上がっている。
大まかなストーリーはほぼ同じだが、大きく違うのは、父親の描かれ方。
日本版の寺尾父はグッと怒り悲しみを堪えていたが、その国の人間性の違いもあるにせよ、韓国版の父親は怒り悲しみを露にする。鬼気迫り、狂気さえ滲み出ていた。演者の熱演も言うまでもなく。
少年犯罪を機に波紋が広がり見えてくる、縦社会の警察内部、法の限界、社会の闇…。
やはりこれらの胸糞悪さは韓国サスペンスだからこそさらに。
欲を言えば、せっかく柄の悪い韓国人なのだから、一切反省の色が無い犯人たち、そのクソ親たちが「うちの子が犯罪者ですって!? 冗談じゃない! あんたの娘がたぶらかしたのよ!」なんてシーンもあれば尚良かった。(そういや、そんな韓国サスペンスもあったっけな)
より重々しくなったからこそ、やりきれなさや考えもさせられる。
娘を殺した犯人たちは一切同情の余地ナシの人間のクズでカスだ。死んで当然だ。
でも、そこで本当に殺してしまったら状況が異なる。
殺された犯人の親たちの悲痛な叫びも分からんでもない。
警察も父親に同情しつつ、追わなければならない。
被害者側が加害者となり、加害者側が被害者となる不条理。
法は法だ。仕方ない。
ならば、父親の無念は誰が晴らすのか。
「ご免なさい」「赦して下さい」「罪を償わせる」「更正させる」…そんな美辞麗句で怒りも悲しみも帳消しになるものか。
それでも妥協しなければいけない不条理な社会と法。
誰かが犠牲になる事によって。