「あっちゃんへ。」愛を積むひと ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
あっちゃんへ。
原作「石を積むひと」の舞台を日本の北海道に移して映画化。
原作では老夫婦らしいが、今作ではまだ中高年50代の夫婦。
佐藤浩市、樋口可南子というビッグネームを揃えて豊かな
景色と共に描かれた夫婦愛の物語。取りたてて物凄い期待
はしていなかったが、美瑛の丘は綺麗だろうし、役者達は
巧いだろうし、美味しそうな料理が見られるかも?なんて
いう単純な欲望で観に行った。原作が洋書というのもある
だろうが、一見すると日本人ぽくないなぁと思える描写が
あったりはするのだが、いや北海道だからアリか、これも。
と、特に奥さん役樋口の演技に見入った。こんな奥さんが
いたら、そりゃ旦那さんたちは豊かな老後が送れるだろうと
思えるほど、いい奥さんである。中盤で、苦しい工場経営の
過去を描いた当時の回想を観ても、あぁこの奥さんで本当に
良かったよねぇと思うばかり。旦那さん(篤史さんなので)を
あっちゃん、あっちゃん、と呼んでいるところも微笑ましい。
彼らを手伝う若者が起こす騒動がかなり唐突で「?」と思うが、
中盤から登場する実娘とのエピソードには居心地が悪かった。
この父親と娘のやりとりのぎこちなさが実家と似ているのだ。
冒頭から、父親はとある一件で娘と疎遠になっているのだが、
母親の急死で接する時間が長くなる。蟠りは解けたものの、
なんだー?このぎこちなさは。というくらいに父親の態度が
何とも不自然。なぜ自分から話しかけられないんだろうな。
武骨で不器用だった夫が妻の遺した言葉(=手紙)を通して、
周囲の人々と交流を築き、助け合えるようになるまで。が
大自然の中でゆっくり優しく描かれていく。あのネックレス、
返ってきて本当に良かった。二人には素敵な贈り物だから。
(いずれはどちらかが先に逝く。毎日を大切に生きなくちゃね)