「美しい北海道の風景も、また良し。」愛を積むひと お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)
美しい北海道の風景も、また良し。
樋口可南子が心臓病で死ぬお話ですが、実はこの映画の山場は、彼女が死ぬところではありません。
難病系映画で一泣きするのを狙って観に来た人だと、彼女のあっけない死に方に肩すかしを喰らうかも。
このストーリーの盛り上がりは、樋口さんが死んだあと、残された人たちが紡いで行くドラマにこそ、あるのですから。
原作の邦題は「石を積む人」。
佐藤浩市が積んでいるのは愛だけではないので、映画の商売のためだけに、こんなあざとい限定をしてしまうのは誤りだと思えます。
原題のほうがはるかに好ましいと思いました。
よくよく考えてみると、樋口さんはずいぶん「自己中」な最後の1カ月なんですよ。
それまで苦労に耐えに耐えてきた人だという設定だから許されるのかも知れませんし、愛と自己中とは紙一重だということなのかも知れません。
気がつかなければ、「美しい愛情に泣けました」で済む話かも知れませんが、気がついてしまうと、愛と自己中とは紙一重なんだなと再認識してしまうのです。
なお北川景子が娘役。
彼女はこれまでどんな映画を演じても、「ぷんスカぷん」みたいな定型演技しかできない人だという先入観があったのですが、今作の演技は立派。
もしかして、撮影現場に、やたらチヤホヤするTV人がブンブン飛び回っていなかったのかも……。
映画女優はこうでなくっちゃと思える好演でした。
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