「ゾンビ映画の中でもトップクラス」アイアムアヒーロー といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
ゾンビ映画の中でもトップクラス
「漫画原作の成功例」としてもよく名前が挙げられる今作。ちなみに原作は未読です。
ジャンルとしては所謂「ゾンビもの」です。歴史に残る名作から吐き気を催すほどの駄作まで、幅広い映画が作られるジャンルですね。前評判がめちゃくちゃ良かったので、かなり期待しての鑑賞になりました。
結論から言えば、「ゾンビ映画に求めるものが詰まった映画」でした。前評判の通り、最高です。
これまでの個人的ベストゾンビ映画「新感染」と肩を並べるくらいの良作です。ゾンビ映画として押さえるべきセオリーはキッチリ押さえつつ、オリジナリティのあるゾンビの造形や、「日本が舞台」という設定を最大限活用したストーリー展開が実に見事でした。原作を読んだことのある人曰く、「原作から多少の改変は見られた」らしいですけど、多分その改変が映画化にあたって良い方向に作用していると思います。
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冴えない漫画家アシスタントである鈴木英雄(大泉洋)は、漫画家としても大成できず、何のとりえも無く、付き合っている彼女の徹子(片瀬那奈)とも冷え切った関係になっていた。ある日、原因不明のウィルスにより人間が「ZQN(ゾキュン)」と呼ばれるゾンビとなって復活するという事件が日本中で発生。「ウィルスは高い場所だと死滅する」というネット掲示板の書き込みを信じ、ゾンビから逃げる最中に偶然知り合った女子高生・早狩比呂美(有村架純)と共に富士山へ向かうのであった。
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日本映画でここまでのゾンビ映画が作れるとは。本当に素晴らしい作品でした。
昨今のゾンビ映画は「低予算映画」の代名詞みたいになってしまってて、安っぽい作品が多いような印象です。私が過去に見た作品で言えば「がっこうぐらし!」がそれに当たると思います。こちらも漫画原作のゾンビ映画でしたね。ゾンビ役のメイクや登場する小道具がチープで、役者もアイドルを起用していたりして、かなり「安っぽい」印象を受けました。(あまり評価が高くない映画ですが、決して悪くないゾンビ映画ですので一見の価値はあります。)
しかし今作では、生理的拒絶感を抱くレベルのクオリティの高いゾンビメイクや迫力のカースタント、大型ショッピングモールを貸し切っての韓国ロケなど、かなり贅沢に資金を使って作られたゾンビ映画であることが見ていて分かります。
役者陣の演技も素晴らしかった。大泉洋の「冴えない男」っぽさ、マキタスポーツの「いけ好かないオッサン」っぽさ、片桐仁の「何だか天才」っぽさ、吉沢悠の「外面は真っ白・中身は真っ黒」っぽさ。キャスティングがまず素晴らしいし、各役者陣が「自分に求められる演技」をキッチリこなしているのが本当に素晴らしかったです。
脚本に関してのレビューは賛否分かれているみたいですが、私はかなり肯定的に見ています。
「映画後半で比呂美の活躍が全く無く、空気キャラになっている」とか「何故比呂美だけ他のZQNと違うのかの説明が無い」という批判もありますが、それは「原作では後に活躍するから」「原作では後に説明されるから」ということであって、原作を改変して強引に活躍の機会を設けたり、強引に説明をねじ込んだりするよりもよっぽど良かったんじゃないかと個人的には思います。比呂美が本気出しちゃったら「比呂美を守るために英雄が勇気を振り絞る」という展開の説得力が欠いてしまうので。
上記のような「漫画原作の弊害が出ているなぁ」と思う部分が多少はありましたが、「冴えない男」だったはずの英雄が崩壊した世界の中で勇気を振り絞り、真のヒーロー(英雄)になっていくストーリーは映画的なカタルシスをビンビンに感じる素晴らしいものでした。私も「冴えない男」の一人として感動しましたし、勇気を貰えました。ライムスターの宇多丸さんの言葉を借りれば「こういうの観たくて俺は映画観てるんだよ」という気持ちです。最高でした。
R15+指定の映画ということで、グロ描写ゴア描写は容赦なく出てきます。
そういう描写が苦手な人には流石にオススメはできませんが、ある程度グロ描写に耐性がある人であれば、是非ご覧になっていただきたいです。オススメです!!