「名作漫画が素敵な是枝映画になった」海街diary だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
名作漫画が素敵な是枝映画になった
海街diaryを是枝裕和監督が映画化すると発表されてから、楽しみにしておりました。とても良かったと思います。
吉田秋生の読者であり、海街diaryのみならず、地続きに位置する作品、ラヴァーズキスをも読み込んでいる者の感想です。
(ラヴァーズキスは映画の冒頭でちらっと出てきたよっちゃんの彼氏の物語です。名作ですのでご興味を持たれたならば是非。20年前の作品なので古いですが。)
あらすじは知ってますので、感情移入が先走り、演者より泣くのが早いという有様でした。漫画のほうも何回も読んで何回も泣いていますから、これは殆ど反射です。パブロフの犬的なあれです。最初の泣き所は山形でお気に入りの場所を案内している最中…よっちゃんが歩けてないあたりで、このあとすずちゃんにてっぺんでお礼ゆうんよねと思って泣けてきました。
で、殆どずっと泣きっぱなしでした。
ですがだから良かった、というわけではありません。
原作はとても良い漫画ですが、漫画にありがちな欠点もあって、すずが中学生にしては喋りすぎるというか、大人びていすぎるし、挟まれるギャグシーンが浮いていたりという感じがあります。(ファンの癖に生意気すみません)
絵も語り口も昔からあまり変わってないので今の作品なのに古く感じる部分もあったり。それが魅力でもあるんですが。
そこをうまーく調整していて、どのキャラクターも生きた人間らしく思え、監督の手腕を感じました。
また、原作はすずの中学生日記的側面もあるのですが、そこを潔くとっぱらい、四姉妹の物語に注力したことで、映画的な納まりも良かったように思います。
さらには、漫画って絵とセリフ以外に、モノローグ(セリフ以外の言葉、心の声のようなあれ)という重要な要素がありますが、これはあまり映像と相性が良くないんです。
そのままナレーションにしてる映像もありますが、あまり成功例が思い当たらず、陳腐だったりくどかったりします。かといって無視できない物語の肝が描かれていたりするので、映像化された時にどう扱われたかはいつも注目しています。
特に海街diaryは難しいんです。なぜならモノローグを担う人間が多いからです。漫画は連作短編だからこの手法でありなんですけども。すず、幸、佳乃、風太(!)ときたもんだ。そしてみんなしゃべるしゃべる。すずのモノローグはほんと大人びていて、語彙も中学生レベルではないんですよ。さてこれをどう料理する?ということなんです。
結果的に、ナレーションはなしでした。でも、分かりにくかったかというと、そうではない。演者の表情などで感じ取れるようになっていて、漫画を読んでいなくても分かるようになっていたと思います。その上で是枝裕和映画になっている。やー、すごいなぁと思いました。
もちろん漫画を知っていたから深読みできたこともありますが、そしてもっと映像でみたいとおもった、描かれなかった部分もありますが、鎌倉に異母妹を迎えてくらす四姉妹の物語としては、この作品の選択が、ベストなんじゃないかと思います。
二ノ宮さんとかどう絡めるのかなぁと思ってましたが、最初っから知り合いという設定で、なるほどと思いました。リリーさん演じる福田さんが九州弁になっていて優しい人になっていましたね。原作では口の悪い関西弁の人なんです。その辺りも面白く思いました。
アフロ店長のレキシに笑かされました。
足の写メいらんから!オモロすぎよ。
漫画では、アフロ店長にこの凍傷ネタで泣かされる話もあるんですよ。
綾瀬はるかが幸なのは美人過ぎるし、若すぎじゃね?と思いましたが、まじめで頑ななところがよく出ていて、はまっていたと思います。それどころか漫画の幸は年の割に老けて描かれてるんじゃ、と思い始めました。
長澤まさみはよっちゃんにぴったりでした。露出高めのよっちゃんファッションが現代的になっていて、にあってました。
坂下課長との続きを、見たいのでまさみ❤️加瀬亮の姿で妄想しておきます。
1番のお気に入りは夏帆の千佳ちゃん。可愛すぎる。短い前髪にきつめのパーマのあのスタイル大好きです。アフロはね、浮くもんね。カマドウマのポーズが最高です。釣りのとか、喪服とは言えない葬式スタイルとか、可愛かったです。千佳ちゃんが、何気なく話題を変えて、姉同士の喧嘩の腰を折る感じとか、いいなぁと思いました。すずといいタイミングでいただきます!とか。
広瀬すずのすずちゃんも、とても中学生らしくてかわいらしくて、目が離せませんでした。桜トンネルのシーンが好きです。あとははだかんぼうと扇風機ですかね。やー、新人賞いっぱいとるんやろうなーって思いました。やー、かわいい。眼福です。
樹木希林の大船のおばちゃんも良かったです。母娘喧嘩を止めるところ、最高でした。
鎌倉の風景にも見とれました。古い家、梅の木のある庭、海沿いを走る江ノ電、砂浜、参道を横切る線路、四季の移り変わり。どれも素敵でした。
最後から二番目の恋にもどはまりしてましたので、極楽寺の改札から小泉今日子が出てきたらどうしようとか妄想しました!
涼しくなったら鎌倉行きたいです。鎌倉特集のハナコも買っちゃったし。
もっかい観に行くかもです。