「蒸し暑くて胸騒ぎのするような日々を綴っていく作品」海街diary たいよーさん。さんの映画レビュー(感想・評価)
蒸し暑くて胸騒ぎのするような日々を綴っていく作品
夏の暑さの隙間から漏れる心地良さを感じたくて、ダラダラと時間のある時に観ていった。なんとなく変わっているのを感じつつ、それとなく染み渡るような変化も感じつつ。diaryとは言い得て妙。
刻々と変わりゆく姿を四季折々な鎌倉の景観に乗せて綴っていく。豪華なキャストが顔を揃える是枝組ながら普遍的な日常に溶け込ませる技量はさすが。こういうフラットに見えて実はそれぞれの悩みや秘密が顔を出す。その繊細さにはあの4姉妹でなくてはダメだなと感じさせる。それを引き立てる、どこかザラザラとした画質も良い。
一方でハマらなかった理由はdiaryだからだと思う。そういうモノを受け入れて人生は続いていく、そうした変化を淡々と描いていくのは簡単ではない。ただ、時間をかけて家族が形と意味を変えていく様は美しかった。
主演は言わずもがな、姉妹4人。だが何より、広瀬すずさんのフレッシュな透明感を味わえるのがこの作品の良い所。今は演技が分厚くドシッとしているが、この頃のあどけなくも周りに可愛がられているようなシーンたちは見物。まさしくdiaryとしての機能を感じる。
陰陽にある心模様を繊細に紡ぎ出す美しさ。対して是枝監督の作品は観れていないものの、その天秤の様な鋭い感覚が『怪物』の様な人の多面さを感じさせてくれるのだろう。夏にぴったりだった。
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