「3時間が4時間超と感じる時間感覚に絶句悶絶」雪の轍 resuwisshu311さんの映画レビュー(感想・評価)
3時間が4時間超と感じる時間感覚に絶句悶絶
ネタバレ
とはいえ、この悠久すぎる時間感覚こそトルコ映画の真骨頂なのかもしれない。そして映像的に魅せられてしまうのもトルコ映画の特徴。
そして、カッパドキアという新約聖書関連でしか目にすることのない地名と、その岩窟洞窟住居群という一般的日本人には想像だにできなかった魅力的すぎる景観に見事に引き込まれてしまった。
音楽的にはシューベルト・ピアノソナタ第20番第2楽章アンダンティーノのみが用いられ、「憂鬱」と「悲哀」の雰囲気が基調となっている。
ストーリー自体は長々申すことなく(というか自身の能力では要約しては語りつくせない・・・)、結論として時間的にも内容的にも映像的にも見応えあり過ぎでしたね。
個人的主観を言うなら、主役初老男子におおよそ自己同一化出来たのが晦渋・難渋映画ながら好印象側に振れた大きな要因。
だからなのだろうが、彼の何でも知った風の口を利く小うるさい妹や、冷めた表情で皮肉な憎まれ口を話す若妻らとの口論の際は両者に腹を立て、男に肩入れをしたりしていた。笑
上に関連して本作で唯一「痛快(という表現も変だが)」だったのが、浅はか思考の若妻が夫が匿名寄付した大金を、愚かにもよりによって家賃滞納している問題家族に無償寄贈しようとし、その家の当主の怒りと憎しみを逆に煽り(そりゃ彼らの立場からすれば侮辱・恥辱を増し加えられる行為だから怒るのは当然)、その大金を燃やされた場面。
そこにはスーッと胸がすく感じは確かにあった。
でも女性視聴者であればまた違う感想となるだろうけれど。
視聴後に調べてチェーホフ小説が原作と知ったが、その読書経験があればもっと映画の筋をよく理解できたかもしれない。でも、そうじゃなくてもじっくり腰を据えて辛抱強く、映像とセリフを咀嚼していけば、ポジティブな何かが醸成されていくこともあるかもしれません。
2107-1