「家族あっての。」グッド・ライ いちばん優しい嘘 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
家族あっての。
内戦を描いた作品の中には至極悲惨な現実を描いたものが多く、
そういうタッチのものからすると今作はカラっと描かれている。
しかし前半で両親を失った兄弟たちが難民キャンプへ辿り着く
までの道のりは長く悲惨、それを記憶しておくことでその後の
物語に説得力が生まれてくる。彼らにとっての幸せとはなにか。
職業紹介所でR・ウィザースプーンが担当する一家族にスポット
が当てられているが、残された難民たちはさらに過酷な生活を
強いられていたことと思う。抽選で選ばれた3,600人のロスト
ボーイズたちは手提げ袋一つでアメリカの地を踏むことになる。
電話もマクドナルドも知らない、そんな彼らをどうやって就職
させることができるのだろう。断る業者も多く、斡旋は難関を
極める。しかし適材や意外な才能は先進国にあるとは限らない。
家族関係を重んじる人間性は、自分たちが苦しんだ生活を憂い、
他者を助けることに生き甲斐を見出す。食べる物もなく自分の
小便を皆で回し飲みして命を繋いだ兄弟に、賞味期限が切れた
食物を廃棄しなければならないこと自体が分からないのは当然。
与えないことの方が罪だと、毅然と話す逞しさには頭が下がる。
そして弟が唯一悔やんできた兄への想い。自分たちを救うために
敵の面前に姿を現し拘束連行された兄。生きているのか、死んで
しまったのかも分からない兄の行方を探しだそうと奔走する弟に
ある一報が齎されるのだったが…。タイトルのグッド・ライとは
そういうことだったのかと最後に判明するが、家族全員の幸せを
願う優しい人間性を持つ人々の祖国が内戦とはなんとも皮肉だ。
(彼らのその後も紹介されるけど、他の難民はどうなったかなぁ)