「美しき大バクチを応援する、素敵な時間。」バクマン。 Cディレクターシネオの最新映画レビューさんの映画レビュー(感想・評価)
美しき大バクチを応援する、素敵な時間。
私事で恐縮ですが、
自分の好きなことをシゴトにしたくて、
20代の頃に壮絶な体験をしました。
新人は1週間家に帰れないことも当たり前で、
よく仕事場の床に寝たものです。
吐血して身体を壊して辞めていった仲間もいて、
夢を追いかけるなんてキレイなんかじゃなかった。
命を賭けた人生の大バクチを打っているんだと、
本気で思ったなぁ。
なんとかプロになっても、
ゼロから創造するシゴトは生みの苦しみがかなり辛いもので。
ライバルはたくさんいるし、賞などの印も必要。
しかも高みを継続しないと、すぐに干されてしまう。
代わりなんていくらでもいるし、新しい感性だって求められる。
そんな想いまでしてもなぜ続けられたかというと、
ゾクゾクするほどの目標があったから。
だからこその達成感も、ハンパなかった。
僕はこの漫画を見たことがなかったけど、
2人の気持ちが痛いほど分かって、
切なくて、後半は涙がとまらなかった。
ドタバタ青春ものだと思ってたから、不覚でした。
何かに打ち込んでる人や、
まだ一生のシゴトが見つかってない人は、
ぜひ観た方がいい。
自分が輝ける瞬間をつくるには、
自分で挑戦するしかないんだな。
そんなバクチも、
長い人生ではきっと財産になるはずです。
佐藤健くんが、抜群にいいですね。
以前仕事でご一緒させてもらったけど、
本当に努力の人。
それを決して見せないところが、彼の魅力だ。
今回の役作りも見事でした。
神木隆之介くんもうまい役者さん。
脳内ポイズンベリーよりも、
等身大な感じがして良かったです。
染谷くんのやり過ぎなカンジも、
さすがですね。
プロジェクションマッピングなどの
実験的な映像の数々も、
新しい発見がたくさんありました。
すごいクリエイティビティで、
監督はかなりのアイデアマンなんだなぁ。
漫画文化とこの映像表現は、
クールジャパンとして世界に受け入れられそう。
海外でも上映すればいいのにね。
劇中使用される漫画の原稿のクオリティが
高すぎて感心してたら、
原作者自ら描いてるんですね。
これもすごいなぁ。
原作ファンの方は
尺の問題や脚本など色々あると思うけど、
僕は読み切り漫画のように楽しめました。
美しき大バクチを応援する、素敵な時間だったなぁ。
何よりエンタメ映画なのに、
切なくて爽やかで、
少しだけ人生の指針をもらえますよ。