ラブ&マーシー 終わらないメロディーのレビュー・感想・評価
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天才って生きづらい
リトルミスサンシャインのお兄ちゃん役だったポールダノがジョンキューザックと2人一役で、主演するとのことで観てきました。
ブライアンウィルソンとビーチポーイズについては殆ど無知です。
「ラブアクチュアリー」のエピローグ部分で使用されていた「神のみぞ知る」がとても素敵な歌だなあと思っていた位の知識でした。
映画内で流れていた曲は「神のみぞ知る」以外だと「グッドバイブレーション」にかろうじて聞き覚えがあった位でしたが、
古びてなくて美しいメロディに心つかまれました。改めて聞きたいと思っています。
実在のミュージシャンの伝記映画に類するものの共通点は、主人公がドラッグとアルコールと暴力に依存していることだと私は分析しています。
暴力は振るってしまう/振るわれているという差はありますが。
その多さに「ありきたりな」だとか「またかよ」と思うこともしばしばながら、
フィクションとして作られた要素ではなくて、彼らが選んでしまった過ちなので書かざるを得ないわけです。
なので、よくないものに依存してしまう理由がどう描かれるかが、苦しんだその人の過去に寄り添えるか否かのポイントになります。
(言うまでもないのですが)
で、この映画において、ブライアンがよくないものに依存してしまった理由を、私はどう解釈したかなのですが、
根源は父なのだろうな、というところです。
映画のスタートからすでに60年代のブライアンは幻聴の類が聞こえていた様ですが、その原因は父からの虐待と見るのが、
自然な気がしました。
幼い頃から殴られていて、そのせいでなのか右耳が聞こえなくて、弟たちも父におびえている様子でした。
バンドのマネージャーで強権をふるっていたようですし(後に解雇)、曲にだめだししたり(あの名曲「神のみぞ知る」をけなすなんて!)、
ビーチボーイズの二番煎じバンドで足を引っ張ろうとしたり、ビーチボーイズの曲の権利を勝手に売却したり(そんなの著作者じゃなくてもできたの?)。
父にもその歪みにいたる歴史があるのでしょうが、そこは横へ置いておくとして、
強い呪縛があったのでしょう。
そんな中で、音楽の才能に目覚め、スターダムを駆け上がった上で味わうプレッシャー。
壊れるな、という方が難しいのでしょう。
お決まりのように、ドラッグを覚えたようでした。そして精神も病んでゆくわけです。
ドラッグ描写や酒を飲んで暴れる、というシーンは殆どなく、精神疾患の症状が進行していく様により軸足が置かれた設定でした。
プールのシーンなど、非常に恐ろしさを感じました。
ポールダノがとてもよかったです。
腕を肩の高さで左右に伸ばして、肘を頭の方へ曲げたポーズ(これをうまく説明する言葉が浮かばない!!)で寝そべってるシーンが
いくつかあり、ただならない雰囲気を感じました。
役作りなんでしょうが、ダノのお腹がすごいポニョで、切なくなりました。
80年代のブライアンは、メリンダという女性と出会い惹かれていきましたが、後見人の精神科医・ユージンの監視下にあり、
友人・家族とも引き離されていました。
あの医者、えげつない人でしたね。
メリンダが尽力してなんとかユージンから引き離すことができてよかったですね。
弟カールが協力してくれたっぽいです。
父が勝手に売った曲の版権とか、出てきたものの結末が不明なこともありました。が、それは実際に起きたこと故にフィクションにしづらいこともあるんでしょうね。
関係者でまだ存命の人も多いでしょうし。
ブライアンは天才ですが、不器用で神経質で弱い人だったのだと思います。
いろいろ大変でしたが、今も音楽活動に精力的とのこと、喜ばしい限りです。
ラストで歌ってたラブ&マーシーがよかったです。
FUN×3でも、まだインパクトが
大瀧詠一の曲で初めてビーチボーイズというバンドを知った。
『サーフィンUSA』なんて、ベンチャーズが奏ってるかと思った位だから(恥)
その魅力はなんと言っても『ハーモニー』。あれだけの透き通るような歌声の重なりこそ、西海岸を連想させるに充分過ぎるイメージである。
で、映画だか、そのハーモニーとは裏腹に、ミュージシャンについて回る『ドラッグ』の影が忍び寄る、サイケデリックなスパイスがちりばめられている。
今でもそうかもしれないが、やはり天才ってのはどうしても周りから共感されない故に、その世界に走ってしまうのだろうか・・・
とはいえ、天才が主題の映画はその特異稀なる能力者故、惹き付けられてしまう。内容が陳腐であったとしてもだ。
でも、父親のDV、または主治医からの薬漬け、兄弟を含めたメンバーとの確執、その陰の部分を、もっとインパクト又はデフォルメしてくれると、恋人に救われるべき必然性のコントラストが華やかになると思うのだが・・・
いずれにせよ、ビーチボーイズも又、商業主義、資本主義にスポイルされてしまったミュージシャンだったということが良く理解出来る映画である。
にしても、『天才』ってのは羨ましい・・・
神のみぞ知る
ファンは彼の辛い時期を知ってる訳で、ハッピーな展開じゃないことも分かっている。その辺をどう描くかなという感じで鑑賞。
ブライアン・ウイルソン公認ってことでビーチボーイズの曲はバッチリ。
若きブライアンと中年ブライアンを交互に写しながら彼の個性を浮かび上がらせる構成。天才という言葉で簡単に言いがちだけど、センシティブな内面をポールダノはよく表現してた。ペットサウンズのレコーディングは鳥肌モノの神シーン。マイク・ラブはやはり憎まれ役に描かれてたかなw
頓挫したスマイルを完成させ、再婚して5人も子供がいて、病状もよくなってきた現在だから救いがある。最後に歌う本物ブライアンの姿はそれだけで感動だ。
ファン向けかもしれないけど、今から知る人にはきっかけとなる映画となるでしょう。
猛烈にペットサウンズが聴きたくなる映画でした。
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