「会う時はいつも他人」湖の見知らぬ男 sugar breadさんの映画レビュー(感想・評価)
会う時はいつも他人
クリックして本文を読む
カメラは湖周辺から一歩も移動しません。定点観測で野外駐車場が(間違い探しかと思うぐらい)何度も繰り返されます。
「燃ゆる女の肖像」のクレール・マトンによる湖畔の美しい撮影、風にそよぐ木々、逆光がゆれる水面、一方で繰り広げらる生々しいクルージング。
気になったのは、皆から疎んじられる昼行燈のような中年のアンリの存在。監督はこのキャラクターを何故設定したのか?ナンパも泳ぎもしない、一日湖を眺めているだけ。グッドルッキングからは程遠い。フランクと心を通わせますが、寝ることはありません。ゲイクルーズの中にいる聖人のような存在です。
終盤そのアンリがフランクために、決死の行動に出ます。
一方でフランクはアンリの犠牲を無駄にしてしまいます。怖くなり一旦はその場から逃げ出しますが、快楽の記憶を拭いきれず、気の弱さからどうしてよいか分からず、絞り出すように声をあげてしまいます。その声にしがみつくしかないように。
「ミシェル…ミシェル…」
宵闇に溶けていくようなラストがすごいです。
これって「禁じられた遊び」のラストの叫びではないでしょうか。もちろん内容は全く違う映画だし、単にミシェルという同じ名前なだけなのですが。禁じられた=社会から阻害された、遊び=快楽を求めるゲームととらえるとどうでしょう。
劇中の性描写が相当激しい(私は少しうんざりしました)ので、観る前には覚悟が要ることを申し添えておきます。
コメントする