「小さな希望が生きる糧になる」ショート・ターム だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
小さな希望が生きる糧になる
ショートターム、いい映画でした。
見てよかったです。
重い話です。問題を抱える子供たちを保護する施設で働く職員と子供たちのお話です。
奇をてらう演出や泣かせの演出は何もありません。淡々と描写するに努める描き方です。
それでいて登場人物たちの苦しみが流れ込んできて、泣かずに見ることはできませんでした。
施設を出ることが決まっているマーカスが髪を剃りたがった理由、
父と自宅で過ごせる週末をアピールするジェイデンが隠していた事、
恋人との子供を喜べないグレイスがその訳を恋人に話せない事情。
本当にどれも辛い、辛すぎる。普通に恵まれていると想像も出来ないかもしれない。
中でも職員であるグレイスが抱える苦しみは、想像するだけで胸が苦しくなる。
そのせいか、状況が重なるジェイデンがほっておけなくて、職員としてはいささかやり過ぎなゾーンへ踏み込んでゆく。
でもそのやり過ぎがジェイデンを少しだけ救い、結果的にグレイス自身を少しだけ救った。
車をバットでボコボコにするシーンは、胸がスカッとした。もっとやれー!感情を表すのは今の君たちには必要だ!と思った。
グレイスの恋人のメイソンがとてもナイスガイだった。お漏らしの話、変な帽子でクッキング、下手な似顔絵。かわいいひとです。
グレイスが父の虐待によるつらい過去を包み隠さずメイソンに話せたのかは作中ではわからなかったけれど、多分まだ話せてないけれど、いつか話せる日がきたらいいなと祈っています。きっとメイソンなら、時間はかかっても受け止めてくれるよ。
ジェイデンが父からの虐待をカウンセラーたちに告白でき、グレイスが子供を産む決意ができただけでも、十分前進したと思うし、希望を感じていました。これからも大変だけどがんばってね、がんばろうねと思いました。
その上で、いつもの職員たちの井戸端会議で出た、施設を出た後のマーカスの話です。この話があまりに幸せな話で、嬉しくなりました。なんて希望に満ちた微笑ましい話なんでしょうか。涙腺崩壊しました。
あぁ、どんなに辛くても、幸せになれる道はあるんだな、諦めたらダメだなと、勝手に励まされました。
上半身裸で逃げ出す子にネイトが人形をあげたのもよかったです。ネイト成長した!