メビウスのレビュー・感想・評価
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Bitter and Shocking Midnight Stuff
Moebius turned out to be more than a controversial film; it was a problematic production as well. Karma for director Ki-Duk's behavior on set may have killed him subsequently. Either way, it's a demented, Freudian look at a deteorating family and the male's relationship to his genitals. Like 3-Iron, it's an engrossing movie with no dialogue. Could be a reflective diary on chauvinistic society.
笑うしかない
人間の恐ろしさよ…
ペニスの所有と管理
核家族のペニスの管理権はその家のただ一人の主婦にある。このこととペニスの所有権をめぐる物語を映画では象徴的に描いている。
ペニスを所有する者とペニスの欠けた者の一対は非常にバランスが良い。持てる者と持たざる者の間には支配と依存という互恵関係が成立するからである。いわば3人称の存在しない世界である。
しかし、ペニスを所有する者が二人に対して、所有せざる者が一人の場合、その関係は成立しない。浮気相手から着信した携帯電話を奪い合うシーンで、ひっくり返ったイ・ウヌの白いパンツ(色気も何もない!)の股間が映し出されるのは、持たざる者の紹介に他ならない。
家庭内に3人称が生まれると、より安定的な互恵関係を求めてペニスは外部へ向かっていく。外へ向かうのが夫のペニスならば浮気となり、息子のものならばエディプスコンプレックスの克服となる。
しかし一方で、女は夫と息子のペニスの管理者でもある。そのためペニスを女の管轄外で使用することは許されない。だから、男が他所で浮気をした代償が去勢であることは、象徴的な意味で当然のことなのである。
悲劇は、女にとって夫のペニスと息子のペニスが等価であるということから始まる。等価であるということは入れ替え可能であるというであり、だからこそ映画の中で、夫のペニスを「確保」することに失敗した妻が、息子のペニスを切り取ることは自然なことなのだ。
息子のペニスを切断した母親は、さらにその切り取ったものを飲み込んでしまうことで永遠にそのペニスの持ち主となり、その家庭から消え去ってしまう。つまり、ペニスの所有権は息子から母親に移り、その新たな所有者が消えたことで、(ペニスを持つ)父親と(ペニスを持たない)息子という安定した関係が生まれる。しかも、この二人はペニスの所有権すら交替させるという強い絆を生む。
しかし、(ペニスを持つ)母親が帰ってくることでその関係は極めて簡単に壊れてしまうのだ。彼女の帰還をきっかけに、父親のペニスが失われた事実が、息子と母親に知れてしまう。そのため、先ほどの一対の安定した関係が失われ、またも不安定な3人称の関係が出現する。だからこそ息子の所有物となった(元父親の)ペニスは、元の浮気相手のもとへと再び向かうのだ。
と、この下手くそなエディプス論やジェンダー論の真似ごとを述べ連ねても、映画が、ペニスが人間の身体の一部であるという事実にかかわらず、その所有者や管理者にとってままならぬ存在であるという喜劇であることと、その喜劇が幕を閉じたときにはすっかりこの小心者の持ち物が極小に縮み上がっているほどの痛々しい映像満載だということのほうが重要である。
キム・ギドクの作品は面白いのだけれど、痛いのはもう少し手加減してくれないだろうか。今回は失神寸前だった。
イタイイタイイタイ
김기덕に、またもや・・・。
阿部定事件を何倍もすげえ
今年観たエンターテイメントの中で屈指の衝撃と爆笑をかっさらった作品。
旦那の浮気に腹を立てた妻は夫の陰部を切り取ろうとする。
しかし、それに失敗した妻は、愛する息子の陰部を切り取る。
その後、妻は失踪。陰部を喪失した息子と父は二人で助け合い生活をしていくのだが、いくつかの過ちを犯した後に失踪した妻が戻ってくる…
こんなストーリーを聞いただけで興味津々なわけだが、この映画はこのとてつもない内容を喜怒哀楽の表情と一部叫びのみで構成されている。
映画「アーティスト」のような劇映画のようなミュージカルようの表情でなく、すべての感情を表情のみで表しているだけなのに実に多弁。
ある意味言葉を使用していないからことむき出しの感情が観客に突き刺さってくるというとてつもない技巧派…
とまたこんなことを書いていると、ちょっと芸術チックな映画かと思いきや、「愛のむきだし」よろしく圧倒的、容赦ない暴力的なパワーに満ちた映画なのだ。
物理的に陰部が切られる痛さ(2回もある)
妻の愛の深さゆえの痛さ。
男ならわかるであろう陰部を喪失した時の自身の欲の処理の仕方と尊厳を失うことの痛さ。
痛さ、痛さ、痛さに絶句してしまう。
けど、なぜか笑ってしまうし、感動してしまう。
実際に映画館では爆笑の嵐、かつ絶句の嵐だった。
日本の園子温。韓国のキムギドクがいれば我々の衝撃欲は今後も満たされるのではないだろうか。
息子を通じてムスコの多面性と人の欲望を描いた作品。
良かった。
息子のムスコを巡って繰り広げられる愛憎劇。
男性の陰部の意味を考えさせられる作品でした。
まず描かれるのは陰部が持つ、自身の存在証明的な側面。
母に陰部を切除された息子が直面するのは社会の排他性。
男性として当然のように保持する器官が無いことで周りから受ける差別。
普段は外に出ない陰部が自身の存在を証明する大事な部位であったことを痛感した息子は人生に絶望する。
また事の切欠を作った父もその問題に直面する。
息子への罪悪感から或る決断をする父であるが。
その決断が招いた事態は彼の存在自体を揺るがし暗い影を落とす。
序盤、圧倒的に優位な立場を謳歌していた彼が見せる後半の無様な奮闘。
完全な拒絶をされた彼が自身の存在を見い出せず絶望する姿は息子の姿と重なります。
そして同時に描かれる快感発生器官としての側面。
快感を求める人間の性。
適した手段として生まれた時から備え付けられた陰部。
専用の器官を失うことで欲望は消化されず蓄積して狂おしい程に人を苦しめる。
中盤に描かれる陰部を使わない快感探究の難易度の高さと比較すると。
その手軽さに一種の危険性すら感じます。
本来の役割である生殖器官としての側面が“ほぼ描かれず”。
生殖器官としての機能を果たした結果の息子が別の側面、欲望を注視させる切欠を作る点も良かった。
具備された本来の目的とは別の目的に重きを置かれたことで生じる悲劇。
でも一度知った目的から逃れられず、知らないことには出来ない残酷さがありました。
演出も新鮮。
本能的に発せられる感情表現音のみが生かされ。
その他の発言は全て排除された本作。
表情と仕草で魅せる演技に感心する反面。
本来は声が出る部分も声が無いため、何処か白々しく見える部分もありました。
演出としては上手くいっている部分といっていない部分が半々という印象でした。
妻役と夫の不倫相手役を同一人物が演じる配役の妙もあり。
繰り広げられる話を楽しみつつ色々と考えさせられました。
息子を通じてムスコの多面性と人の欲望を描いた本作。
正直、登場人物の行動原理はかなり呑み込み難く。
特に妻の行動は刺激的ではあるが感情移入は出来ず。
話の納得感は無いが、刺激的で思考の切欠になる作品でした。
オススメです。
セリフ無しでこれは確かに凄い。
失敗作
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