ハーモニーのレビュー・感想・評価
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自我が生まれ死ぬまで
捜査官の主人公が事件の解決と落とし前をつける話
虐殺器官を鑑賞後勢い余って見ることに。
劇場とTVの差、作画の差などで大分げんなりしてしまったものの、話自体は面白かった。
アクションより事件捜査と回想に重きを置いた展開なので退屈と感じる人もいるかも知れない。
同じ世界の後日譚だが本作は平和の約束された日常、自我がどんどん削られて争いの無い世界。ちょっと過剰すぎる気がするがこれが世界平和の一つの形なのかも知れない。
世界のシステムを逆手に取った犯人のテロ、同一作者なだけに展開が似ている気がするが、主人公達は女性なのでそれならではの心の動き、感情がいい差別化になっていた。
親友のいかにも拗らせた様な性格も話が進むにつれて理由付けされていくし、最後の展開なども綺麗な決着だった。
ただ、世界観と緊張感があまり感じられず、大多数の人類が終末のを迎えであろう大規模な話な割りに、身内だけでなんだかこじんまりしてしまった感がいなめない。
犯人の動機は捻りがあったのだが自分としては納得があまりできなかった。いや理解が足りていなかったのかも知れないのだが・・・
自分の理想郷に人類を連れていこうとした訳だが、そこには友情も愛もない世界、主人公の事が気に入っていた様だがそんな感情も生まれなくなってしまう世界に行く意味はあるのか?
合理的に考えているのか感情的なのかよくわからなかったが、それでも決着をつける最後は切なく思えたし、綺麗な悲劇だと感じた。
原作を読めば理解が深まるだろうが、映画として一つの作品なのだから単体で納得させられる作りであってほしかった。
劇中セリフより
「理想を求めるか心理を求めるか」
どちらも欲しいが純度が高い物ほど一つしか手に入らない。
理想も心理も突き詰めると人間は人間でいられなくなるのではないだろうか。目指すのは勝手だが目指さないのも勝手なはずだ。自分の判断を押し付けてしまわないようにしたいものです。
もったいない
伊藤計劃の虐殺器官、ハーモニーは
いわゆるゼロ年代SFでは非常に評価されている
本作は小説の映像化という点で高評価
でも作品としてはやや評価を下げざるを得ない
もともとハーモニーは密度が濃い小説
ナウシカのネタやしょうもないギャグ、
フーコー、ヒトラーの雑学まで
「etml」なんてのは、この作品の根幹をなすのだが
大幅に削られている。これは映像化で当然
画面映えする表現を選択して描いているのは好感。
小説で想像していた世界が見事に表現されている。
町並みや建物の造形は主人公の感じる嫌悪感を反映しているのだろう
小説上では色彩の薄い立方体なのだが、この改変は世界観を表現するのに一役買っている。
またPassengerBirdのデザイン、螺旋監視官の制服デザインはずば抜けて優れている。
ただWatchMe、生府<ヴァイガバメント>、財布が使えれば~などの説明などもごっそり抜けている。
作品の大きな魅力が喪失しているので映画をみて面白いと思ったら小説は絶対に読んだほうが良い。
ハレルヤは流石に宗教色濃いので改変したのだろう。そこは脳内補完した
あくまでも映像化は成功している。
が、単体作品としては魅力が少ない。
面白かったですね。 良かった点 SFでどれも辻褄があっておりその映...
観た後にどんどん好きになっていく
中身のパンパンに詰まった上質なSFであり、エンターテイメントもきちんと保っている作品を観た。
なにぶん会話シーンが多く、それをカメラの動きでごまかしているような気になってしまう、(レストランでの会話シーンなど)少し残念な所もなくはないですが
語りしろの多く、鑑賞後深く考えさせられるというのは映画としてとても正しいと思います。
一見クールなようで、高校時代のこじれによってその後の人生が振り回されている感じ、主人公のトアンもなかなか人間くさいのです。
ラストはそんな彼女の人間臭さが、ミァハの想像を超える。そんな風に解釈しました。ホントは星4つけたいぐらい。
鑑賞後、二人のオタク男子ペアの連れてこられた感じ満載の片割れが
寝ちゃったわあと漏らしていたのを聞き、お前なんかハーモニーされちまえと思うに至りました。
原作を踏まえた新しい作品
原作が好きで見に行かれた方々は映画オリジナルの結末に不満を抱かれているようですが、私はとても美しい結末だと感じました。
原作小説は読んでいません。映画から入っても充分楽しめました。
なのでここに書くのは純粋にハーモニーという映画作品を先入観無しに見て受け取った感想です。
所々に入る13年前の回想ではミァハとトァンの関係性を描写するものが多く、トァンは自分が知らないことを知っている・見えないものが見えているミァハに惹かれていって、トァンがミァハに対して強い憧れ・親愛を抱いていることがみてとれました。それに比べトァンとキアンの繋がりに関する描写は少なく、序盤のキアンに対するトァンを通したイメージがキアンという存在をそれほど重大なものではないと思わせました。なのでトァンにとってのキアンの死はあくまでもミァハの生存を示唆する程度のものとしか受け止めませんでした。父親のヌァザに関する印象も同様で、和解の描写がヌァザが銃弾からトァンを庇った直後少しのみで、それ以前のトァンの父親に対する厳しいセリフと比べると、一応確執は払われたが復讐に燃える程ではないように感じさせました。死ねなかったトァンのミァハに対する申し訳なさや、ミァハが生きていることを知った時のトァンの描写、13年前の唯一の理解者としての関係性等を考えると、トァンがチェチェンへ行くラストは単純に、ミァハに会いたいんだろうなという印象でした。なので後日見た原作の、父とキアンの復讐のために二発の銃撃でミァハを殺す、という結末を知った時は逆にとても驚きました。要は上記のように映画では二人の死を重く受け止めたり復讐に燃えたりしているトァンが描写されていないのです。むしろ演出の重点はトァンのミァハに対する想いに置かれていて、世界の命運がトァンに懸かっているというセリフに対しても、本気で言ってんの?、と返したり、トァンの中の優先度も、ミァハを止めること<ミァハに会うこと、であるようにはっきり書かれていました。回想シーンでも思春期の不安定な心を描写していてトァンがミァハに愛情を持つ過程が見られます。自殺前にミァハが本を燃やすシーンでは己のうつし身である本を殺すことをトァンに代執行させているわけです。これを踏まえると、ミァハはチェチェンでトァンが殺しに来てくれるのを待っていたのだと思いました。
私が映画を見ただけで持った解釈は、
ミァハの望みは、人間的な生き方。それが叶わない13年前の世界で、ミァハは死を選ぶ。13年後、世界中に本来の人間的な営みを自覚させる。私は、ハーモニー化はミァハにとって死と同義だったのだと捉えました。本を燃やすことと死ぬことが同義であったように。意思が消滅するなら、ミァハはトァンに自分を殺してもらいたいと思っていて、トァンもまた、自分の中のカリスマであったミァハですら意思が消えてしまうことに耐えられなかったのではないでしょうか。私は映画の結末は、最後まで世界を憎悪したかったミァハと・今度こそミァハと一緒に、また愛する人を愛しいままにしたかったトァンの心中だと受け止めました。なので映画だけを見た私としては、最後に、私の好きだったミァハのままでいてほしい・愛してる、といって銃声が一発響くことはすんなり受け止められましたし、そこに120分の物語が全て集約されていてその壮大な要素が見事に成就したなと思いました。そのまま人物を映すことなく終わるのも、映画オリジナルの解釈の幅を持たせるためだと思いました。横から頭を撃つのでもなく、密着した状態で相手の背中に銃口を自分側に向けて突き立てるのもそういった意図があったのだと感じました。
とにかく、原作如何は考えず映画単体として見たときは本当に素晴らしい作品であると思います。そしてそのラストも一つの作品として見れば自然な流れで美しくまとまっています。監督がインタビューで、結末は当初の予定から変更して最後にアレンジしたと言ってますが、それはまさに、映画を最初から見ていくとそれが自然な流れに見えたからでしょう。もちろん、原作通り復讐でミァハだけが死んだとも捉えられますが。
作者の価値観や主張がうかがえる、魂のこもった大変素晴らしい映画でした。
作者の伝えたかったことは?
難しくて美しい。恐ろしい角度から“生きる意味”を問う異色作。
【賛否両論チェック】
賛:全てが管理され、皆が同じように生きている社会に、疑問を投げかける内容に考えさせられる。主人公の切ない葛藤も印象に残る。
否:話そのものはかなり難しく、聞いていてよく分からない内容も多い。グロシーンも結構あり。
まず、体内監視システムによって人々の健康が管理されているという、奇想天外ですが決して荒唐無稽ではない設定が、斬新でもあり、どこか恐ろしくもあります。食事を摂る度に、コンタクトレンズにカロリーが瞬時に計算されて出てきたり、踏み台を上がろうとすると“段差注意”の警告が出たり。そういったところはあると嬉しい機能だったりするかも知れません(笑)。一方で全てが監視され、人々が皆、均一的で違いのない世界は、そこに相容れない者にとっては、かえって不気味さを醸し出しているようにも感じます。
主人公が日本を語る際に、
「優しさでじわじわと絞め殺されるような世界。」
と言ったり、
「まがいもののような世界。」
と言ったりするのも、なんとなく頷けてしまうような気がします。そんな中で、自らの存在意義について自問自答していく主人公の葛藤が、切なくも美しく描かれていきます。
ただお話そのものは、非常に詩的というか専門的というか、難しい言葉が難しい表現で紡がれていくので、とても難解で理解しにくい内容でもあります。
人間というものの存在意義やあり方について、じっくりと考え直してみたい人には、オススメかも知れません。
話がよくわからず…
これはちょっと、
Project.Itoh始動
原作を勧めます
だいぶ前に原作を読んでからの観賞でした。
好印象な点
・原作の世界観を見事に視覚化したビジュアル、キャラクターデザイン。
・原作からするとだいぶ端折られてるものの要所はまとめられて映画のみでもあらすじはわかる。
印象が悪かった点
・トァンとミァハの関係性が原作と変わっている気がした。特に2人が出てくるラストシーンの改変。
正直トァンとミァハの関係性についてはかなり引っかかりました。
しかしイメージの湧きにくいシーンもあるSF世界観をここまで違和感なく映像化されてるのはすごいと思います。ミァハの透明感というか無機質さのようなものを感じさせる声質がまた良かったです。
ただ既読のファン向けの映画かなという感じはします。小説の文章量を考えると仕方ないとは思いますが。
映画を見た方は是非原作を読んでストーリーの隙間を補完して頂きたいです。
言語世界のイメージ化がとにかく秀逸。
この作品は原作の根幹たる記述の仕掛け、架空のマークアップ言語の「ひとつのレンダリング結果」として本当に良くできている。一度は自らレンダラーとなった原作ファンは、その結果を見比べて違和感を覚えたり感嘆したりすることになるはずだ。その点、この作品を紡ぎあげたレンダリングエンジンは、間違いなく一級品だろう。
ただ、原作を知らない場合、この物語が html を模した etml で表現されていることの面白みを味わうのはかなり難しいように思う。冒頭から、これが記述された過去であることを提示するなど、理解を助ける工夫はされているけれど、そのこと自体が結末を容易に予測させたり、物語の複層性を捨象するといった弊害もなくはない。要するに原作は「テキスト形式」でしか表現できない、あまりにも小説的な小説で、表現の根っこにある部分はそもそも映像化できないという、至極当たり前な話でもある。
もちろん、お話自体の面白さだけでも十分に楽しめるし、タイトルにもなっている完全に調和した必然の世界をどう考えるかという思考実験的な面白みもある。映像的な快感はいうに及ばない。けれども、やはり原作と合わせて味わう方が数倍楽しめることは間違いない。
ここからは余談だけれど、Project Itoh 3作のうち、先に公開された『屍者の帝国』のBL風味に対して、こちらは百合風味の仕上りになっている。苦手な人は要注意かな、と。あと、タイトルクレジットやエンドクレジットのマークアップ遊びなんかも個人的にはわりと好き。
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