ハーモニーのレビュー・感想・評価
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観た後にどんどん好きになっていく
中身のパンパンに詰まった上質なSFであり、エンターテイメントもきちんと保っている作品を観た。
なにぶん会話シーンが多く、それをカメラの動きでごまかしているような気になってしまう、(レストランでの会話シーンなど)少し残念な所もなくはないですが
語りしろの多く、鑑賞後深く考えさせられるというのは映画としてとても正しいと思います。
一見クールなようで、高校時代のこじれによってその後の人生が振り回されている感じ、主人公のトアンもなかなか人間くさいのです。
ラストはそんな彼女の人間臭さが、ミァハの想像を超える。そんな風に解釈しました。ホントは星4つけたいぐらい。
鑑賞後、二人のオタク男子ペアの連れてこられた感じ満載の片割れが
寝ちゃったわあと漏らしていたのを聞き、お前なんかハーモニーされちまえと思うに至りました。
原作を踏まえた新しい作品
原作が好きで見に行かれた方々は映画オリジナルの結末に不満を抱かれているようですが、私はとても美しい結末だと感じました。
原作小説は読んでいません。映画から入っても充分楽しめました。
なのでここに書くのは純粋にハーモニーという映画作品を先入観無しに見て受け取った感想です。
所々に入る13年前の回想ではミァハとトァンの関係性を描写するものが多く、トァンは自分が知らないことを知っている・見えないものが見えているミァハに惹かれていって、トァンがミァハに対して強い憧れ・親愛を抱いていることがみてとれました。それに比べトァンとキアンの繋がりに関する描写は少なく、序盤のキアンに対するトァンを通したイメージがキアンという存在をそれほど重大なものではないと思わせました。なのでトァンにとってのキアンの死はあくまでもミァハの生存を示唆する程度のものとしか受け止めませんでした。父親のヌァザに関する印象も同様で、和解の描写がヌァザが銃弾からトァンを庇った直後少しのみで、それ以前のトァンの父親に対する厳しいセリフと比べると、一応確執は払われたが復讐に燃える程ではないように感じさせました。死ねなかったトァンのミァハに対する申し訳なさや、ミァハが生きていることを知った時のトァンの描写、13年前の唯一の理解者としての関係性等を考えると、トァンがチェチェンへ行くラストは単純に、ミァハに会いたいんだろうなという印象でした。なので後日見た原作の、父とキアンの復讐のために二発の銃撃でミァハを殺す、という結末を知った時は逆にとても驚きました。要は上記のように映画では二人の死を重く受け止めたり復讐に燃えたりしているトァンが描写されていないのです。むしろ演出の重点はトァンのミァハに対する想いに置かれていて、世界の命運がトァンに懸かっているというセリフに対しても、本気で言ってんの?、と返したり、トァンの中の優先度も、ミァハを止めること<ミァハに会うこと、であるようにはっきり書かれていました。回想シーンでも思春期の不安定な心を描写していてトァンがミァハに愛情を持つ過程が見られます。自殺前にミァハが本を燃やすシーンでは己のうつし身である本を殺すことをトァンに代執行させているわけです。これを踏まえると、ミァハはチェチェンでトァンが殺しに来てくれるのを待っていたのだと思いました。
私が映画を見ただけで持った解釈は、
ミァハの望みは、人間的な生き方。それが叶わない13年前の世界で、ミァハは死を選ぶ。13年後、世界中に本来の人間的な営みを自覚させる。私は、ハーモニー化はミァハにとって死と同義だったのだと捉えました。本を燃やすことと死ぬことが同義であったように。意思が消滅するなら、ミァハはトァンに自分を殺してもらいたいと思っていて、トァンもまた、自分の中のカリスマであったミァハですら意思が消えてしまうことに耐えられなかったのではないでしょうか。私は映画の結末は、最後まで世界を憎悪したかったミァハと・今度こそミァハと一緒に、また愛する人を愛しいままにしたかったトァンの心中だと受け止めました。なので映画だけを見た私としては、最後に、私の好きだったミァハのままでいてほしい・愛してる、といって銃声が一発響くことはすんなり受け止められましたし、そこに120分の物語が全て集約されていてその壮大な要素が見事に成就したなと思いました。そのまま人物を映すことなく終わるのも、映画オリジナルの解釈の幅を持たせるためだと思いました。横から頭を撃つのでもなく、密着した状態で相手の背中に銃口を自分側に向けて突き立てるのもそういった意図があったのだと感じました。
とにかく、原作如何は考えず映画単体として見たときは本当に素晴らしい作品であると思います。そしてそのラストも一つの作品として見れば自然な流れで美しくまとまっています。監督がインタビューで、結末は当初の予定から変更して最後にアレンジしたと言ってますが、それはまさに、映画を最初から見ていくとそれが自然な流れに見えたからでしょう。もちろん、原作通り復讐でミァハだけが死んだとも捉えられますが。
作者の価値観や主張がうかがえる、魂のこもった大変素晴らしい映画でした。
作者の伝えたかったことは?
う〜ん、作者の伝えたかったことが、見えなかった感じがしました。
原作は読んでいませんが、大幅にアレンジしているのでしょうか?
作画はポスターのイメージで想像していたのですが、CGと思ってしまうような、平面的な絵でガッカリです。
難しくて美しい。恐ろしい角度から“生きる意味”を問う異色作。
【賛否両論チェック】
賛:全てが管理され、皆が同じように生きている社会に、疑問を投げかける内容に考えさせられる。主人公の切ない葛藤も印象に残る。
否:話そのものはかなり難しく、聞いていてよく分からない内容も多い。グロシーンも結構あり。
まず、体内監視システムによって人々の健康が管理されているという、奇想天外ですが決して荒唐無稽ではない設定が、斬新でもあり、どこか恐ろしくもあります。食事を摂る度に、コンタクトレンズにカロリーが瞬時に計算されて出てきたり、踏み台を上がろうとすると“段差注意”の警告が出たり。そういったところはあると嬉しい機能だったりするかも知れません(笑)。一方で全てが監視され、人々が皆、均一的で違いのない世界は、そこに相容れない者にとっては、かえって不気味さを醸し出しているようにも感じます。
主人公が日本を語る際に、
「優しさでじわじわと絞め殺されるような世界。」
と言ったり、
「まがいもののような世界。」
と言ったりするのも、なんとなく頷けてしまうような気がします。そんな中で、自らの存在意義について自問自答していく主人公の葛藤が、切なくも美しく描かれていきます。
ただお話そのものは、非常に詩的というか専門的というか、難しい言葉が難しい表現で紡がれていくので、とても難解で理解しにくい内容でもあります。
人間というものの存在意義やあり方について、じっくりと考え直してみたい人には、オススメかも知れません。
話がよくわからず…
原作未読、で、それは関係ないけどお話についていくのがやっとで疲れてしまいました…。覚えにくい名前も関係してるけど…。
結局、ミァハのラストの展開も実像なのか幻影なのかちょっと悩んじゃったし…。
原作読んでから見ればよかったかな~、と思います。そしたらこの世界にしっかり入り込めたかも。
これはちょっと、
原作は未読です。
途中までは面白かったです。ですが最後まで見ると全体的にちょっと無理矢理すぎるんじゃないかと思いました。わざと難しくしているのか、2時間という制限のせいか、説明不足な点も多い気がします。
街並みやキャラクターの雰囲気と、締めのエンディングは良かったです。
Project.Itoh始動
原作の持ち味を生かしながら、娯楽としてのエッセンスを加え、ようやく映像化としてのスタートが切れた感じがします。
残酷描写や同性愛、ティーンが考えそうな哲学感という原作の際だっている部分をしっかりおさえています。
加えて、生めしい未来技術都市構造のデザイン、不安を煽る回転するカメラワークといった映像作品ならではの要素も追加してます。
万人受けはしないオタク映画としては今年最高と思います。
原作を勧めます
だいぶ前に原作を読んでからの観賞でした。
好印象な点
・原作の世界観を見事に視覚化したビジュアル、キャラクターデザイン。
・原作からするとだいぶ端折られてるものの要所はまとめられて映画のみでもあらすじはわかる。
印象が悪かった点
・トァンとミァハの関係性が原作と変わっている気がした。特に2人が出てくるラストシーンの改変。
正直トァンとミァハの関係性についてはかなり引っかかりました。
しかしイメージの湧きにくいシーンもあるSF世界観をここまで違和感なく映像化されてるのはすごいと思います。ミァハの透明感というか無機質さのようなものを感じさせる声質がまた良かったです。
ただ既読のファン向けの映画かなという感じはします。小説の文章量を考えると仕方ないとは思いますが。
映画を見た方は是非原作を読んでストーリーの隙間を補完して頂きたいです。
言語世界のイメージ化がとにかく秀逸。
この作品は原作の根幹たる記述の仕掛け、架空のマークアップ言語の「ひとつのレンダリング結果」として本当に良くできている。一度は自らレンダラーとなった原作ファンは、その結果を見比べて違和感を覚えたり感嘆したりすることになるはずだ。その点、この作品を紡ぎあげたレンダリングエンジンは、間違いなく一級品だろう。
ただ、原作を知らない場合、この物語が html を模した etml で表現されていることの面白みを味わうのはかなり難しいように思う。冒頭から、これが記述された過去であることを提示するなど、理解を助ける工夫はされているけれど、そのこと自体が結末を容易に予測させたり、物語の複層性を捨象するといった弊害もなくはない。要するに原作は「テキスト形式」でしか表現できない、あまりにも小説的な小説で、表現の根っこにある部分はそもそも映像化できないという、至極当たり前な話でもある。
もちろん、お話自体の面白さだけでも十分に楽しめるし、タイトルにもなっている完全に調和した必然の世界をどう考えるかという思考実験的な面白みもある。映像的な快感はいうに及ばない。けれども、やはり原作と合わせて味わう方が数倍楽しめることは間違いない。
ここからは余談だけれど、Project Itoh 3作のうち、先に公開された『屍者の帝国』のBL風味に対して、こちらは百合風味の仕上りになっている。苦手な人は要注意かな、と。あと、タイトルクレジットやエンドクレジットのマークアップ遊びなんかも個人的にはわりと好き。
伊藤計劃さんを数週間前に知りました
映画の始まる前の宣伝で初めて知ったものです。伊藤さんのことをwikipediaで調べた程度の前知識で鑑賞しました。
2009年頃のアニメ、『フラクタル』を思い出しました。さらにマイナンバー通知を受け取ったばかりで、現実の自分と照らしながら、話に入り込む事が出来ました。
戦車?に、T4と書かれていてドイツのT4作戦のことも思い出しました。日本でも優生学なるものがあったことも。
鑑賞者に若い女の子もかなり居たのが、今の風景なんですね。
いろいろ思うことがあった、素敵な映画でした。
高度な技術力と難解な物語
物語はユートピアとなった世界が舞台で、理想的な世界とは高度管理化されているので実はディストピアなのです。という贅沢な悩み事を持つエリート美女が主人公という非現実ながら、トマス・モア以降、人類が不変的に追求する問題を扱っています。驚いたのはアニメーションが2D3Dなどの映像がなめらかに融合しているところで、細かいところまで追求されていると思います。美女の精神力で世界が崩壊するかも知れないという非現実的な切迫感が、繊細なアニメーションで表現されていて圧倒されました。
話は面白く映像を見戻ります美しい
全く事前の知識がなく鑑賞しました。
街で起こる事件の描写では、出血場面が描かれるし、少しセクシーな表現戻りますあるので子供向きでない。更にセリフの内容を理解するには少し知的ではないと難しい当然思われます。
ハーモニーな世界は、何だかうまく作られた麻薬を想像してしまうしミァハが意識を初めて持った時の事も映像では全く描かれないのに、何だか想像してしまい、映像を観ているのにもう1つの映像を頭の中で描いている変な状態でした。
カタルシスのない俺の哲学って感じ~
映画にするならエンターテイメント要素は必要だと思うんだけど
世界観を支えるメカに美術デザインや作画が一級品で
それで満足できる向きにしか薦められない
冒頭のエピソードでwatch meというものを誤魔化してゴニョゴニョできる主人公が手の内を明かさないまま
事件が起こり、捜査を始めるので、てっきりそこら辺が最後のどんでん返しの仕掛になるのかと思って見てたので尚更かな
理想郷を作るために今ある世界を壊す是非に焦点を合わせてずっと展開してたのに
最後の最後は、好きな人が思ってたような人じゃなかったという色恋沙汰が決定打になるっていう
それにしてもシステムに依存していない人とか市街地が出てくるオープンな世界で、理想郷か今の世界かという二者択一というプロットが説得力に欠けていて
その後どんな世界になったのか描かれないので腑に落ちることがない
作中で熱く語られる議論を胡散臭い目で見ない素直な年齢で
死生観とか人の尊厳とか哲学的なものを楽しめるのかなぁと思うし
円城塔の屍者の帝国が面白くて期待してただけに
面白く楽しく見せる仕掛けのない作品でガッカリした
原作読んでれば違ったのかなぁ
アニメの質は文句無い
原作をあれほどカラフルにかつ詳細にわたって具現化するのは大変だったろうと想像する。原作には、面白さはあるけれどもビジュアル的なイメージがなかなか湧いてこないと思った。そういった面でよくぞあそこまでビジュアル的な世界観を創り出したものだと感心する。
国際情勢やフィジカルとメンタルの問題も取り扱っているストーリーであるために、説明が必要だという意図からなのかかなりセリフが多かったように思う。見事に創り上げた世界観の映像を背景に、その語りが展開されるのではあるけれども、どうしてもそこに退屈なものを感じてしまう。あんなに説明が必要だったのかどうか・・・と思うのは原作を既読した者だけが言う我儘なのかー。もう分かりづらさ満載に、ビジュアルで押し切っても良かったように感じた。ベースとなるものがしっかりしていれば、まわりが自主的に情報を集めようとしてくれるものだと思うのだがー。
原作にはもっとユニセックス的なものを感じたけれど、映画の描かれ方があまりにも偏りすぎなように感じて、多少ひいてしまったところがある。性に関しても超未来的な描き方で良かったよなー、といっても具体的にどうこう言うのは難しいものではあるけども。
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