「(優しく言えば)珍作です。」神は死んだのか さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
(優しく言えば)珍作です。
良作、佳作、秀作、色んな表現がありますが、本作はそのどれにも該当しない"珍作"だと思います。
実はこの「神は死んだ(GOD IS DEAD)」で、神の存在は証明されているんです。
だって神が存在したから、死ねるんだもの。
この教授は既に、神の存在を認めているんです。ザ・二律背反。
ロースクルールに行く=法律畑で仕事する予定のジョシュは、この冒頭1分くらいで出てる結論に気付きません。
もし弁護士を目指しているなら、向かないと思う。
その後も、宇宙が出来た経緯、人間が誕生した経緯には、科学で説明がつかない部分がある。そこは神の最初の言葉"光あれ"の方が納得いくとか、結構かったるい弁論を繰り広げます。
で、最終的に教授の過去のできごとに触れ、"神を憎んでいる"ことを認めさせる。
そこで、勝ち誇ったようなジョシュの言葉。
「存在しない神を、貴方は憎んでるのですか?」
だからそれは、最初の段階で分かってるやん!ってなる。
教授は最初から、神の存在を認めてる。
ジョシュが教授を論破したことで、生徒達に信仰心が戻ります。みんな一斉に"神は死んでない"と連呼!
ここまではいいんです。
教授の「無神論者はだいたい元クリスチャンだよ。厳しい現実を目の当たりにして、考えを変えるんだ」など、鋭い言葉もあります。
教授は12歳の時に、母親をガンで亡くしてるんです。
哲学、科学、宇宙、色んな側面から神の存在が語られて面白い。
でもこれ以降、本作からは珍作臭が漂い始めます。
(※注 クリスチャン及び、いかなる宗教も否定する意図はありません)
このジョシュと教授の関係がメインで、周りを取り巻く人達も"神がらみ"で色々あります。
①ジョシュが相談する牧師とその友人。
アフリカから来たらしい友人は、フロリダのディズニーランドに行きたがる。しかし牧師の車は故障。レンタカーは二台ともに故障して
しまう。けれど"神様お救いください"と祈ると、牧師の車のエンジンがかかる。奇跡を喜ぶ二人。神様サイコーってなる。
②牧師の教会のメンバーで教授の奧さん
奧さんは教授の元生徒です。いつも教授と、その友人達に無教養を馬鹿にされています。挙げ句、友達の居る前で「自分の程度を知れ」的な厳しいことも言われる。
牧師は言います「君の価値を一番分かってるのは神様だけだ」
結果、彼女は離婚します。
③教授の奧さんのお母さん&息子。
お母さんは認知症ですが、悪い息子(末期癌の彼女を捨てた男)が「完璧な人生を送ってる」と言った時、意識がはっきりとしてこう言います。
「悪魔は神様にその人をとられたくなくて、完璧な人生を与えるのよ。でもそんな人生は独居房にいるようなものよ」
つまり苦難を与えると、人は神様に縋る。なので完璧な人生を与えて、神要らずにしてるんだと言うんです。ちょっと、怖くて鳥肌立ちました。
④事故に遭う教授。
肋骨が折れて肺に血が溜まり、危険な状態。そこに居合わせた牧師&友人。「死ぬのが怖い」という教授。
「悔い改めれば天国の扉が開く。神を信じるか」
と言います。教授は"神を信じる"と亡くなっていく。
⑤末期癌のブロガー&モスリム家の娘。
娘はクリスチャンになって家を叩き出される。ブロガー、モスリムの子、ジョシュ、教授の最期を看取って直ぐの牧師達が、"神様サイコー"と歌うロックコンサートでイエイ!で終わります。
この①~⑤の中で、ちょいちょい気になるところがありますよね?
一番は④教授の最期です。死を目前にして怯える無神論者に、「それを悔い改めないと天国行けないよ」っていうのはどうなのか?とか。
でも、それで死の恐怖が取り除けるならいいのか?とか。
②もマインドコントロール入ってないか?神様以外、貴女の良さは分からないと言ってるけど、まずは二人の関係修復を説くべきじゃないかとか。
だってクリスチャンにとっての結婚は、"病める時も貧しい時も"でしょ?とか。
後半から、なんかちょっと雲行きが怪しくなる本作。
ネット上の感想には"クリスチャンの考えを知るにはいい映画"とあったのですが、いやいや……、うちの夫は敬虔なクリスチャンですが、こんなではありません。
てか、私の周りのクリスチャンで、こんな極端な方達はいません。
因みに私は無神論者です。
本作は"布教的な映画"なのか、"他人へ宗教を押しつける信者の恐ろしさ"を描いた、シニカルな作品なのか理解に苦しむ珍作なんです。
制作陣のバックボーンから探ろうとしたのですが、本作以外は日本未公開の方達のようで判断できませんでした。