「映像化したことが素晴らしい」オートマタ ハルさんの映画レビュー(感想・評価)
映像化したことが素晴らしい
偶然にも『マジカル・ガール』に続きスペイン系の作品を観ることになった。まったく異なる作品だがどちらも楽しめたのは良かった。
今作の舞台設定は太陽活動が悪化して人口が2100万人にまで激減した地球ということだが文明はまだ崩壊してはおらずにAIを有するロボット〈オートマタ〉が人間の生活を支えている、としている。自らのミステイクではなくあくまで外的な要因から滅亡しかけている人類は意外すぎるほどに社会構造はあまり変わっておらずに、ディストピアものの常である管理社会という要素は進行しているようだ。
冒頭でオートマタには2つの原則があると提示されアシモフのそれとは少し異なるがつまりはそれが破られる話なのだろうと察せられるし実際にそうだった。そこに至るまでの謎解きのような展開はやや冗長であったが一作品として成立させるためには仕方ないか。
そして自己修復と進化を覚えたオートマタが自立し始めてから、さあどうなる!、と思いきや意外とユルい展開が続く。そこでは人間とオートマタお互いの立場における自己保身のやり取りが始まるのだが、街に戻れば自分たちが破壊されることを知っているロボットが破られていない原則の「人間を守る」によってかなり無意味に汚染地帯で主人公をより汚染された地域に引きずっていくということで、これは矛盾した構図でもある。
ここではいわば生存本能が優先されているので街から離れることを譲らない彼らは既にただのロボットではなく意思を有した生命体のようである。
実際印象的なシークエンスではあったが普通の視点で言えばかなり退屈な描写だったと言える。作品を通じてのイマイチ感はこうした撮影や本を含めたアイデアの甘さゆえだろう。やろうとしていることは良いんだけれども‥
気になったのはクリオら4体のオートマタがどうやって改造されたのか、なのだがまあいいか。
ちなみにクライマックスで保険の外交員役であったバンデラスが軽く無双になるのはご愛嬌。そして海に向かう途中の車内で彼らの子供(新生児)がスターチャイルドに見えたのもご愛嬌だろう。意図されたかは別として。