「あの日のダンス。」あの日の声を探して ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
あの日のダンス。
クリックして本文を読む
オンライン試写会にて鑑賞。
F・ジンネマンの「山河遥かなり」を基にM・アザナヴィシウスが
1999年ロシアに侵攻されたチェチェンを舞台に描いた意欲作。
大まかなプロットは同じだが主人公にもう一人、軍に強制入隊
させられたロシア人青年コーリャを儲けたことで現実味が増した。
冒頭から惨劇は始まる。両親を家の前で殺されたチェチェン人の
ハジはそのショックで声を失い、赤子の弟とその後家を脱出する。
一緒に殺されたかもしれない姉を心配しつつ、弟を燐家の玄関に
預けて自身は街中へと放浪、やがてEUの女性職員キャロルと
出逢い彼女の自宅に保護されるのだったが。。
ハジとキャロルの(言葉が通じない)歯がゆさと意識のすれ違いに
ハラハラするも、自分を匿い親切に面倒を見てくれるキャロルに
やがてハジも心を拓き、それをきっかけに声が出るようになる。
原版と同じく温かい心の通い合いと国間を超えた理解の大切さに
胸がジーンとなるのだが、対して街中で突然警察に捉えられた後
ロシア軍に強制入隊させられ非人道的な体罰訓練に苦しめられる
コーリャが哀れでならない。心根の優しい人道的価値観を持った
青年が追い詰められ、やがて残虐な兵士へと改変されていく過程。
この二つの物語は並行して描かれるも、決して交わることはない。
それがラスト、とある動作で冒頭の場面の意味が突然解明される。
あ!と思ったその瞬間、物語は突然幕を下ろす。そうだったのか…
其々の立場と意識を克明に炙り出し、正義非正義を問わず終わる
この物語は私達に「決して無関心になるなよ」と訴えているようだ。
(A・ベニングもさすがの演技。ダンスの告白シーンは泣けた泣けた)
コメントする