「神経を削られる伝記映画。」完全なるチェックメイト lylycoさんの映画レビュー(感想・評価)
神経を削られる伝記映画。
アメリカに突如現れたチェスの天才が、誰も見たことのない独創的な手で、当時のチェス大国ソ連のチャンピオンを倒すってストーリーは、ロッキー的な「アガる」映画を想像させる。でも、これはそんな気持ちの良い話じゃない。
実在のチェスプレイヤー、ボビー・フィッシャーは、ある種の突出した才能の持ち主にありがちな、精神的な脆弱性を多分に抱えていて、それがどんどん悪化していく様がかなりしっかりと描かれている。むしろそっちがメインといってもいい。聴覚過敏やら統合失調症的な盗聴妄想やら、見ているこっちの神経まで削られるような描写のオンパレード。そんな当人の苦悩をよそに、米ソ代理戦争の英雄として彼を祭り上げるマスコミや民衆の態度にもゲンナリさせられる。総じて痛々しい話だった。
扱っている世界は違うけれど、これまた実在の天才数学者、ジョン・ナッシュの生涯を描いた『ビューティフル・マインド』を思い出した。
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