「アカデミー賞の抱える問題。」イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密 bashibaさんの映画レビュー(感想・評価)
アカデミー賞の抱える問題。
チューリングに関しては、フォン・ノイマンと並んで、コンピュータの基礎を築いた人間として、なんとなく知っていましたが、その人がこのような苦悩を抱えていたとは知りませんでした。イギリスの国民的歌手のエルトン・ジョンがゲイであることを公言し、今年、グラミー賞を獲得したサム・スミスは以前からゲイであることを公表していたようです。まさに隔世の感があります。
カンバーバッチの演技は完璧でした。もしかして、本当のゲイではないのか、と思わせるほどの演技でした。しかし、アカデミー賞の最優秀主演男優賞はカンバーバッチには行きませんでした。こういうことは、アカデミー賞の歴史ではままあります。古くは「怒りの葡萄」や「荒野の決闘」で主演男優賞を獲れなかったヘンリー・フォンダ(フォンダは晩年、最後の主演作「黄昏」で漸く主演男優賞を獲りましたが・・・)、そして、「アラビアのロレンス」で一世一代の演技を披露しながら、主演男優賞を獲得できず(このときの受賞者は「アラバマ物語」で優等生的演技を披露したグレゴリー・ペックでした)、一昨年、惜しくも逝去したピーター・オトゥール。そして、「狼たちの午後」で狂気を漲らせた演技を披露したアル・パチーノ(このときの受賞者は「カッコーの巣の上で」のジャック・ニコルソンでした)や「評決」で格調高い演技を披露したポール・ニューマン(このときの受賞者は「ガンジー」のベン・キングズレーでした)も苦杯をなめています。尤も、パチーノとニューマンは後年、とても代表作とは言えない作品で主演男優賞を獲得しています。私は思うのです、このように素晴らしい演技を披露した俳優が二人いた場合には、二人の同時受賞でいいのではないのでしょうか。そして、目ぼしい俳優がいないときには、該当者なし、でも構わないという方式にしてもいいのではないのか、と。まぁ、そもそも、演技に対して、優劣をつけること自体、問題があるのではないのでしょうか。(かつて、そういうことを理由にアカデミー主演男優賞を辞退した役者がいました。「パットン大戦車軍団」に主演したジョージ・C・スコットです)実際、女優賞では同時受賞があったのですから、(キャサリン・ヘップバーンとバーブラ・ストライザンドです)今後は全ての部門で(勿論、作品賞も監督賞も含めて)同時受賞がありえるように検討してほしいものです。
話を元に戻すと、この映画を観ているうちに、「エニグマ」なる暗号を作成した人物がどういう人間であるのか、非常に興味が湧いてきました。太平洋戦争の勝敗の帰趨を決したミッドウェイ海戦。あの戦闘に日本軍が負けたのは日本軍の暗号がアメリカ軍に全て解読されていたからだと、言われています。暗号が解読されていなければ、太平洋戦争はともかく、ミッドウェイで日本軍は負けていなかった、とのことです。兵器を交えての戦いよりも、やはり、頭脳を駆使しての暗号解読こそが、本当の戦争では重要になってくるのだと、痛感しました。まぁ、現在のロシアの愚かな指導者のように核兵器をチラつかせるような短絡的な思考回路の持ち主を前にしては暗号など、無意味かもしれませんが・・・。