「嘘と裏切りの世界で青春は砕け散る」オマールの壁 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
嘘と裏切りの世界で青春は砕け散る
パン職人の青年オマール(アダム・バクリ)。
彼は、パレスチナ自治区内に高くそびえる壁を乗り越えていく。
壁の向こうには、兄のように敬愛するタレク(エヤド・ホーラーニ )と彼の妹ナディア(リーム・ルバニ)が暮らしている。
タレクはハマスの一員で、幼馴染のオマールとアムジャッド(サメール・ビシャラット)とともにイスラエル軍に対する襲撃計画を立てていた。
オマールはナディアに恋していた。
アムジャッドもまたナディアに恋していた。
そして、イスラエル軍襲撃の数日後、オマールはイスラエルの秘密警察に捕えられてしまう・・・というハナシ。
映画は、自由などほとんどないパレスチナでの生活を写していくが、襲撃事件ののちはほとんどサスペンス映画の様相を呈していきます。
収監されたオマールはイスラエル警察の罠にはまり、懲役90年の刑か、それとも警察の協力者になるかを迫られ、ついには協力者の道を選んでしまう。
それは、嘘と裏切りの渦巻く世界に足を踏み入れることとなり、ナディアへの愛情を全うすることが困難な状況となってしまう。
あれれ、なんだかこんな映画は過去にたくさん観たような・・・そんな思いが募ってくる。
第二次大戦下の戦争映画、冷戦下のスパイ映画、それらのジャンル映画とあまり変わらない。
しかし、そんな世界がいまだ世界のあちこちにあるということだ。
この現実は重い。
しかし、映画単体として観て、この映画、どうなんだろうか。
やっぱりジャンル映画にみえてしまう。
この映画、新世界国際劇場や今はなき新橋文化劇場の2本立て・3本立ての1本として紛れ込んでいても不思議はない。
だからジャンル映画であることが悪いというわけではなく、多くのひとに接する機会が増えるためにはジャンル映画であることが重要なのかもしれない。
それでも・・・
もう少しパレスチナ人の生活描写がほしかった。
ここいらあたりが残念。