「素朴で美しい映像」闇のあとの光 荒川ラリーさんの映画レビュー(感想・評価)
素朴で美しい映像
美しい風景をバックに、メキシコのとある村に暮らす一家の営みが淡々とつづられている作品です。場面をしばらく映すと、特段脈絡なくブツっと別の場面に切り替わります。別々の断片が徐々に形をなして一つのお話が物語られる構成となっています。淡々と…とは書きましたが、それでもドラマチックなエピソードは各所に散りばめられており、不倫や殺人などの人間の陰部であったり、果ては神とも悪魔ともつかない異形なモノが日常に侵食していく不可思議な現象だったりが、いきなりポンと画面に映し出されます。(とは言え、大方の場面は引きの画で撮られているので、目を覆ってしまうようなグロテスクな描写はありません。あくまでも淡々とした表現にとどまっています)
レンズには工夫が凝らしてあり、画面の真ん中にはピントが合っていますが、周縁部はぼやけています。その効果もあってか、画面は単に美しいだけではない、幻想的な雰囲気をまとっています。まるでタルコフスキーの映画を見ているような安心感がありました。
手に汗握るようなドラマはないですが、安穏とした静けさが沁み入る作品です。
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