劇場公開日 2022年4月29日

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「好きだけど、星のつけられない訳」勝手にしやがれ HAL2005さんの映画レビュー(感想・評価)

好きだけど、星のつけられない訳

2023年10月18日
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鑑賞方法:DVD/BD

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映画史ではゴダールが唯一の革命といわれるほど、彼のこの処女作の影響力は大きいらしいが、今を生きる我々にとっては、そんなことはどうでもいいことで、要はこの映画が面白いかどうか。それだけが重要だろう。
そういう意味では自分は間違いなくこの映画を楽しめているし、レンタルで観た後、わざわざBDを買ったから今後も楽しむだろうし、自分が最期に観る映画を2本選ぶとすると、そのうち一本はこれを選ぶだろう。
だが、ご覧の通り、僕はこの映画に星をつけていない。
何故なら、僕には評価できないからだ。
この映画は僕の手に余る。間違いなく面白いのに、何がこんなに面白いのか理解できない。多くの人が60点ぐらいの評価をしてるのは、恐らく、何が起きたのか理解できなかったからだと思う。
いや、身構えなくても結構。ストーリーやコンセプトは至ってシンプル。(以下、あらすじだが読みたくない人はこの段落を飛ばせば結構)チンピラ(と言ってもパリのチンピラは随分洒落てる)がニューヨーカーの娘に惚れてる。チンピラはゴリラみたいに欲望に忠実で学がないが、女は大学生で、芸術を愛し、ピカソやフェルメールを愛し、ヒューストンを愛してる。が、このゴリラのことも愛してる。このゴリラ、人殺しだけど好きだ。困った、さぁ、どうしよう?それだけだ。
よくある、三文小説じみたプロットだが、多くの人が考え付くということはそれだけ世情を反映させているということ。僕はこの話に出てくるチンピラに随分共感したし、ニューヨーカーにも同情し、自分の好きな女の子を投影できた。
ストーリーは分かり易く。登場人物にも簡単に共感し自己投影できる。なのに、何が面白いかわからない。とても、不気味だ。その不気味さをどう書いたら良いのかわからない。
今は自分のことがよくわらないようなものだと考えている。あまりにも距離が近いことはよくわからないように、あまりにも私事のように感じられる作品は意味がわからない。
それはともかく、主演のベルモンドはまだ縁起が洗練されてなくて、初々しい。
ニューヨーカーの娘、ジーン・セバーグはベリー・ショートが人類史上最も似合う。
二人の輝きは万人の目の肥やしになるだろう。
最初にゴダールが映画史に残る唯一の革命家だと書いたが、彼がこの規格外の映画を作ったことで、彼の映画がスタンダードになり(事実、古い映画にありがちな妙なダルさは皆無だ。)、映画が不可逆的に変化したから、その別れ目である、ゼロの映画を認識できないのでは?
もしくは、映画のようで映画でない全く別のものなのではないか?
もしくは、僕にはわからん超絶技法が使われているからなのか?
時間の流れの不自然なのに、しっくりくるところ、記憶の中の自分を見ているときのような感覚をどのように感じたのかは全くわからないが、万人受けしうる作品にはなっている。僕は自分と同年代の若者に観て欲しい。

HAL2005